連載 調査データファイル 【第29回】 雇用・人事システムの構造改革 キャリア開発の今後④
ビジネスモデルが急速かつ不連続に進展する現在の経営環境下、時として経営トップは大胆な改革を迫られる。このような時、これまで大半を占めてきた主流派出身の経営トップでは対応できない。また、改革には体力、気力が不可欠であり、若さという要素も見逃せない。これらを総合して考えると、変革期に待望される経営トップ像とは、若い非主流派出身者ではないだろうか。
1. 変革期の経営トップ
技術革新、国際化、高齢化などの進展によって社会経済構造が急速に変化しているが、こうした構造改革期には経営トップの資質が、企業の浮沈に直接関係してくる。 1980年代までに築き上げ九日本的経営といわれたビジネスモデルでは、明らかに年功的な人材育成が適していた。連続的な技術革新と継続的な市場拡大という経営環境下で、大量生産・販売を推進していくためには、組織全体がほぼ同じ方向にまとまって邁進していくことが要求された。
こうしたビジネスモデルには、企業内の中心的な事業部門で内部育成された主流派の経営トップが適していた。これまでのビジネストレントの延長線上での企業成長を押し進めていくためには、さまざまな組織調整を行うことが重要であり、先輩、後輩とのつながりが濃厚な内部育成された主流派経営トップが適していた。それゆえ、経営トンプの人選方法は、企業不祥事といった突発的な事件が発生した時を除いて、年功的な順送りの人事が支配的となり、必然的に就任時の年齢が60 歳以上と高齢になることが多い。
ところが、1990年代以降の経営環境は、急激に変化する市場構造に柔軟に適応することができるビジネスモデルを要求している。調整型の主流派経営トップでは、しがらみが多過ぎて大胆な事業構造の転換などがなかなかできず、どうしても決断が遅くなるうえに、改革も中途半端なものになってしまう。多くの企業では、1990 年代に決断が遅いうえに改革も中途半端といった状況に陥り、失われた10 年を経験しているうちに、収益力が急速に低下、企業体力が失われていった。
ビジネスモデルが急速かつ不連続に進展していく現在の経営環境下では、1980 年代まで成功した主流派経営トップの年功的昇進人事では、通用しなくなってきているのは明らかである。これまでの主流派人脈とのしがらみのない傍流ないしは非主流派からの人材登用が不可欠である。