第41回 “普通”だから役になりきれる居心地がいい役者でありたい 久保田 磨希氏 俳優

ドラマ『大奥』の「美味でございますぅ」のセリフで注目を浴び、その後もドラマや映画など数々の話題作への出演を続ける俳優の久保田磨希さん。
活躍の場は幅広く、バラエティ番組でも自然体の姿でお茶の間の人気を得る。
これまでの歩みと数々の決断、そして自分らしさについて話を聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=山下裕之


テレビの中の人に憧れて、でも……
―― 大人気ドラマのシリーズ最新作『続・続・最後から二番目の恋』が今年11年ぶりに帰ってきました。久保田さんは2012年放送の1作目から、小泉今日子さん演じる主人公の部下・三井さん役で出演しています。
久保田磨希氏(以下、敬称略)
最近の連ドラには珍しく、この作品の現場ではリハーサルがあって、お互いに意見を言い合うんです。今回は小泉さんにも「この台詞はこんなふうに言いたいんです」と考えを伝えることがありました。毎回ご一緒していても、11年前の前作のときまではそれが言えなかったので、時を経て、小泉さんにそれが言える関係性になれたのがすごくうれしかったですね。高校時代に、雑誌の切り抜きを美容室へ持って行って「キョンキョンにしてください」「できません!」と言われた私ですから(笑)。
―― そのころから芸能界に憧れていたのですか。
久保田
いえ、もっと幼いころから。芸能界というか、テレビの中の世界に憧れていました。実家がお寿司屋さんで両親とも忙しく、一人っ子の私はテレビが遊び相手。家じゅうのテレビをつけていれば、夜も寂しくありませんでした。
今でもよく覚えているのですが、ある夜、お風呂上がりに裸のままでテレビの前を通ったら、ちょうどピンク・レディーさんが映っていて、ケイちゃんがアップに。私、思わず「裸でごめんなさい」と謝りながら走り過ぎたんです。この話は後年、ケイちゃんこと増田恵子さんご本人にもお伝えしました。
―― テレビの“中”に、本当に人が入っていると思っていた?
久保田
そうなんですよ。そして、自分もそっちの人になりたいなと。でも、周りにはとてもそんなことは言えません。絶対にバカにされると思っていましたから。テレビに出ている人は小柄でかわいい人ばかり。私は巨大児で、小学6年で今とほぼ同じ身長があったんです。だから、将来の夢を聞かれても本心を偽り、「看護師」と答えていました。
夢をあきらめようとした矢先に、転機が
久保田
自分がすごく嫌いだったんですよ。母にも容姿のことを言われ続け、勉強や運動を頑張っても否定されてしまう。コンプレックスの塊でした。だから、自分以外の誰かになりたい。役者を志したきっかけの一つに、そんな思いがあったことは間違いありません。