CASE2 サイボウズ|目指すのは“人のエコシステム” 理念への共感とつながりを大切にする従業員体験 武部美紀氏 サイボウズ 人事本部 Talent Success部 部長 他

サイボウズでは近年、オンボーディングに力を入れており、一般的には「即戦力」と見なされるキャリア入社者にも、半年間にわたる施策を実施している。
また、昨年には、再雇用を目的とせず、現役社員も参加可能な独自のアルムナイネットワーク「CIA」もスタートさせた。
これらの施策に共通するのは、自社の理念に共感した人との「つながり」を大事にする姿勢だった―。
[取材・文]=崎原 誠 [写真]=編集部
理念への共感を重視しチームワークあふれる組織に
「従業員体験(Employee Experience)」の充実度や満足度の観点で見たとき、サイボウズは、魅力的な企業の1つといえるだろう。「チームワークあふれる社会を創る」という理想を掲げ、その実現に向けて、チームワークを発揮しながら一人ひとりが主体的に活動する。多様な個性・価値観を重視し、画一的な働き方に当てはめることはせず、チームと本人とのコミュニケーションにより、“100人100とおりのマッチング”を図る。自分に必要な学びを自分に合った方法で学べる仕組みも整えられている。
同社の従業員がこうした仕組みや組織風土を享受しながら活躍していくうえでもっとも重要となるのが、存在意義(Purpose)と文化(Culture)からなる企業理念への共感である。
「当社はチームワークあふれる社会を創ることを理想としていますし、私たち自身も、働くうえでチームワークをとても重視しています。それを実現するために必要な要素として、『理想への共感』といった5つのカルチャーを大事にしています(図1)」

人事本部Talent Success部部長の武部美紀氏はそう説明する。
キャリア入社者にも半年間のオンボーディングを実施
理念への共感やカルチャーを体現できるかという点は、採用選考の基準となるだけでなく、入社後のオンボーディングでも重視している。オンボーディングは、新卒入社者には約1年間、日本語でのコミュニケーションが難しい英語話者を含めたキャリア入社者には6カ月間にわたって実施する。
同社がオンボーディングに力を入れるようになったのは、5~6年前で、キャリア採用が増えてきたことがきっかけだ。新卒採用が例年40名前後なのに対し、昨年度のキャリア入社者は75名、英語話者は3名と、キャリア入社者のウエートが高まっている。同社は20年以上新卒採用を続けており、新卒向けの新人研修は以前から充実していたが、キャリア入社者の定着をサポートする施策は手薄だった。
一般的に、キャリア入社者は即戦力としての活躍を求められ、半年にも及ぶオンボーディングを行うのは珍しい。この点について武部氏は、「サイボウズには独特の仕事の仕方や文化があり、私自身、キャリア採用で入社した当初は苦労した経験があります。自社のツールを使って仕事をしますのでその使い方を学ぶ必要がありますし、公開される情報についても、他社との違いに戸惑うことが多いのです」と話す。
キャリア入社の場合、本人も「すぐに成果を出さなければ」と焦りや不安を抱えていることが多い。そういう人にいきなり「即戦力として力を発揮してほしい」と言うよりも、まずは自社に慣れ、文化を知り、どのように仕事に取り組めばよいかをキャッチアップしてもらう方が、その後の活躍につながると捉えている。