企業事例③ キッコーマン 入社時からのキャリア開発でステージごとに意識を変える
キッコーマンでは、入社後から15年目までの時期を「CDP(Career Development Program)」期間と位置づけ、社員のキャリア開発を多方面から支援する。その中で“自立”から“自律”へと意識を変え、40歳前後では、組織の意思決定に貢献できるように成長していく仕組みがある。
入社8年間で「自立」し管理職準備期間へ移行
日本の伝統調味料であるしょうゆ。その海外市場開拓にいち早く取り組み、100カ国以上の国々で愛用される調味料に育ててきたキッコーマンは、今や売上高の45%を海外が占めるグローバル企業である。
こうした変化の激しい環境を勝ち抜くため、同社では求める人材像を「プロ人材」としている。具体的には「①仕事における高度な専門能力を持ち、②その能力を発揮し成果に結びつけ、③市場で新しい価値を創造できる人材」である。そして、プロ人材としての成長を支援する仕組みとして、Cコース(総合職)社員全員に対して、CDP(Career DevelopmentProgram)制度を1994年7月より運用している。
CDPの定義は、「自己責任において自ら向上しようと努力する社員が、職務遂行能力や経験を順次身につけながら、その能力等を最大限に発揮し、自己実現を果たしていけるように会社が支援するトータル人材育成システム」である。この制度が適用されるのは、原則として入社から15年目(学卒年齢36歳目安)まで。その間は、CDP期間と位置づけられ、研修、自己啓発といった教育だけでなく、ローテーションや面接など多方面から育成を支援する。このうち、新入社員から入社8年目(30歳前後)までを第Ⅰ期、それ以降から15年目までを第Ⅱ期としている。
持株会社のもとでグループ会社の間接業務を担うキッコーマンビジネスサービスの人事部・嶋田和宏氏は、この2期の違いについて、次のように話す。
「第Ⅰ期は『自立』期。自分の領域で一人前になることをめざす時期です。そして第Ⅱ期は『自律』期。管理職に向けた準備を始める時期と位置づけています」
同社では職能資格における「主幹」から、管理職となる。主幹への昇格時期は40歳前後と比較的早い。現在多くの企業では、この管理職のポスト不足が問題になっているが、キッコーマンではそうではない。人事部の田尻佳彦氏は、社員の年齢構成について次のように説明する。
「実は我々の上の世代に数多くの管理職がいたのですが、その世代が退職したため、人数がスリム化しました。その後の世代は毎年の採用が30人前後で推移しているため、現在の社員の年齢構成はかなり改善されてきています。管理職には毎年20人程度が昇格しますが、当社の場合、ポスト不足は大きな問題とはいえません」