CASE.2 日立ソリューションズ 2年間にわたる新人教育で自律性のある人材を育てる
日立グループにおける情報・通信システム事業の中核企業、日立ソリューションズ。ITビジネスで直面する新たな課題に対して、自ら考え、解決していくことが求められる中、同社では入社後2年間、OJTリーダが中心となり、職場ぐるみで新人を育てる仕組みを構築し、自ら考え行動できる自律型人材の育成に力を注いでいる。
●育てる文化新人は2年間、「研修員」
日立ソリューションズでは、新入社員は入社後2年間、「研修員」として位置づけられている。新人研修を終えて職場に配属されると、先輩社員が2年間、研修員をマンツーマンで指導する「指導員」制度が長年にわたって定着してきた。2年間の締めくくりには、研修員から総合職になるための必須条件となる「総合職研修員論文制度」がある。これは、研修員が2年間のOJTの成果を論文にまとめて発表する制度で、2年間にわたる研修の総仕上げとして位置づけられている。発表会は200人収容できる講堂で、本部単位で行われ、部署総出で観に行く。発表前には部署内で厳しいチェックが何度も行われ、中にはそのための合宿を行う部署もあるほどだ。「私が入社した頃から行われている、日立の伝統的な育成施策です」と話すのは、人事総務統括本部人財開発部部長の松田欣浩氏。「職場に新人が入ってきたら、みんなで育てていくという文化が根づいていると思います」
こうした伝統を持つ同社が、近年重視しているのが、内的動機づけを重視した社員の成長支援だ。その背景について松田氏は、次のように語る。「昨今のITビジネスは、顧客の課題解決や新サービスの提供、グローバル対応などが求められ、答えを自分で考えて解決していくことが必要になっています。そのためには、言われたことをやるのではなく、内的動機づけを意識しながら、社員一人ひとりが自律性を高めていくことが重要です」そのため、先に挙げた研修員に対するOJTも、伝統にのっとりながらも、最近は少し形を変えて実施されている。具体的な内容を見ていこう。
●制度変更主体的に学ぶ工夫
新入社員は入社後3カ月間、新入社員教育を受ける。IT未経験者も多いため、この間は基本的なITスキル教育が中心となる。しかし、従来のように、ただ講師が教える形式では、新人は学生時代の延長で受け身の姿勢で臨みがちだ。そこで同社では、自ら学び、考え、行動できる自律型社員としての意識を持ってもらうため、次のような工夫を取り入れている。まず、社内の組織体制に合わせてクラスを「グループ」、クラス担任を「グループマネージャ」、1クラスに5〜6ある班を「ユニット」に見立て、ユニットごとに「グループ運営」「業務伝達」「メンバーの能力向上」などの役割を決め、グループ(クラス)運営を新人たちに委ねるようにした。「基本的にこちらからの一方的な指示や指導はせず、それぞれの役割の中で自分たちが何をすべきかを考えさせるようにしました。また、グループマネージャは指導役ではなく、必要に応じて相談を受ける立場に改めました」(松田氏)
研修自体も、疑似的な業務課題を与える形にし、まず自分たちで試行錯誤しながらアウトプットを出し、後から講師に質問して理解するような形式に変え、自分たちで主体的に学ぶ側面を強化した。さらに、研修最終日には、新人が企画した研修を実施する機会を設け、各グループの企画ユニットがグループ内で出たアイデアをまとめ、グループ独自の企画研修を実施した。こうした研修内容の見直しは、新人を職場に配属して半年後に、育成責任者である職場の課長に対して行うアンケート調査の結果に基づいている。