世界No.1を支えるのは、人へのこだわり優秀さより「Nice」を選ぶ 水谷 翔氏 Duolingo Director of Regional Marketing, Japan

可愛い見た目とシニカルな言動のギャップが魅力のフクロウでおなじみDuolingo。世界No. 1語学アプリで、日本でも2022年にCM 放送が始まるなど、成長を続けている。
驚くべきことに、日本市場を支えるのはたった2人。
そんな同社の採用と育成のこだわりについて、Director of Regional Marketing, Japanの水谷翔氏に話を聞いた。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=中山博敬

日本はわずか2名少数精鋭の組織戦略
―― 「Duolingo」は世界でもっともダウンロードされている語学学習アプリです。
水谷翔氏(以下、敬称略)
Duolingoは「無料で」「楽しく」「効果的に」学べる学習プラットフォームです。まずこだわっているのが「無料」。学んでいくと途中から有料になったり、無料版と有料版でコンテンツを変えるアプリもありますが、Duolingoは最初から最後まで無料で学べます。
マネタイズは広告収益、有料版提供、アプリ内課金の3つで行っています。有料版は広告が非表示。また、レッスンで間違えると「ハート」が減り、無料版はハートがなくなると回復するまで待たなくてはいけませんが、有料版は無制限です。
「楽しく」はゲーミフィケーションを取り入れています。具体的にはリーグ戦を開催。経験値を高めてリーグをステップアップしていく仕組みがあります。「効果的」は様々な大学や機関で検証されていますが、たとえばアメリカの大学でスペイン語学習者が2セメスター分学んだレベルの成績を、約半分の期間で達成したという報告があります。
―― Duolingoはアメリカ発の企業です。どのような会社ですか。
水谷
創業者でCEOのルイス・フォン・アーンはグアテマラ出身です。貧困国で英語は貧困から抜け出すための重要なツールですが、貧困層は貧困ゆえに英語を学ぶ機会をなかなか得られません。その社会課題を解決するためにルイスが2011年に立ち上げました。
最初はアメリカのスペイン語やフランス語学習者の間で人気になり、その後、英語圏以外の英語学習者にも利用が広がっていきました。
―― 事業戦略と、それを支える人材について教えてください。

水谷
市場としては、非英語圏の伸びしろが大きく、特にアジア、そのなかでも日本は重点マーケットの1つです。一方、楽しく効果的に学べるDuolingoのノウハウは、語学学習以外にも横展開が可能です。すでに数学や音楽を学べるコースを提供していますが、今後も多くの方が学び、かつ多くの方がペインを抱えているような科目はターゲットに入ってくるのではないでしょうか。
プロダクトはアメリカで開発し、マーケティングは各リージョンで行っているため、人員もそれに合わせた形になります。アメリカ本社はエンジニアやデザイナーが大半を占め、プロダクトのユーザー体験向上を追求しています。各リージョンは少数精鋭で、多くの地域は1人でマーケティングを担当しています。日本は私が1人で立ち上げて、24年5月にソーシャルメディアマネジャーが1人加わりました。全体では約800人の組織です。