経営学習研究所 ―帰ってきたラーニングバー2024― 「マネジャーになりたくない問題」の本質とは何か? 中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授 他
職場のマネジメントの重要性が増す一方で、管理職に適した人材がいない、管理職が育たない……など、「管理職不足」を人事課題として掲げる企業は少なくありません。
また、若手が管理職になりたがらないといった傾向は以前から指摘されていたことですが、昨今では、仕事量が多く責任が重い割に待遇が伴わないとして「管理職が罰ゲーム化した」とまで言われるようになってきています。
「管理職不足」の問題を正面から取り上げたイベントレポートをお送りします。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=山下裕之
大人の学び場「ラーニングバー」
2024年7月21日、経営学習研究所(以下、MALL)主催のイベント「帰ってきたラーニングバー2024『マネジャーになりたくない問題』の本質とは何か?」が、内田洋行が運営するユビキタス協創広場CANVAS(東京・中央区)にて開催されました(共催:株式会社内田洋行・株式会社ウチダ人材開発センタ)。
このイベントは、アルコールを含む飲食を伴う勉強会「ラーニングバー」形式で行われました。ラーニングバーとは、MALL理事であり立教大学教授の中原淳氏が2000年代に開催していた勉強会で、『知がめぐり、人がつながる場のデザイン―― 働く大人が学び続ける“ラーニングバー”というしくみ』(2011年、英治出版)という書籍にもなっています。中原氏によるラーニングバーは、2011年以降開かれておらず、昨年再開されたため、「一度、ラーニングバーに参加してみたかったので楽しみです」と話す参加者もいました。
昇進試験を拒否する人も「管理職不足」問題へのモヤモヤ
ラーニングバーの始まりはウェルカムドリンクから。受付を済ませた参加者約130名が、まずはウェルカムドリンクとサンドイッチを受け取り、近くの人との名刺交換や自己紹介を行います。参加者に、「若手がマネジャーになりたがらない傾向があるのかどうか」を尋ねてみると、様々なお悩みの声が聞かれました。
管理職としてメーカーに勤務する方は、10年間の海外駐在から最近日本に戻り、職場の様子が一変していて驚いた、と話します。
「若手社員が、自分の仕事が終わっていないにもかかわらず、きっかり定時に退社するんですよね。注意したら『転職します』と言い出しかねない感じで、なにもできない(笑)。昇進試験を勧めても『受けたくない』と拒否する人が出てきました。確かに管理職になっても給料は少ししか上がらず、メリットが無いと思われているのかもしれませんが、10年前はここまでではありませんでした」
ちなみに、駐在先では、管理職に一般社員の3倍の給料を払っていたためか、昇進へのモチベーションは高かった、と話していました。
教育関係のお仕事をしている参加者は「実は小中学校では『教頭になりたくない』問題があります」と教えてくれました。教頭(副校長)は仕事の範囲が広く役割も曖昧で負担が大きいイメージがあるうえ、多くの先生が子どもと直接関わることができる仕事を希望している、という事情もあり、昇進試験に手が挙がりにくいのだそうです。