COLUMN ふわっとした依頼にご注意 副業という働き方でトラブルに巻き込まれないために気をつけたいこと 山田康成氏 ひかり総合法律事務所 パートナー弁護士
フリーランスの仕事上のトラブルの相談や和解あっせんを目的に2020年にスタートした「フリーランス・トラブル110番」。
副業が推進されれば、企業で働くビジネスパーソンも副業先でトラブルに巻き込まれる可能性もある。
どのようなことに注意すればいいのだろうか。
[取材・文]=菊池壯太 [写真]=山田康成氏提供
働き方の多様化とともに増加するフリーランス
昨今の働き方の多様化やテレワークの普及、そして副業・複業を推進する企業が増えつつあることを背景に、フリーランス、個人事業主、クラウドワーカーなどとよばれる人たちが増えつつある。
内閣官房の調査によると、2020年時点でフリーランス人口は462万人と試算されている。フリーランスとは、①自身で事業等を営んでいる、②従業員を雇用していない、③実店舗を持たない、④農林漁業従事者ではない、と定義している。
フリーランスが増加するに伴い、業務を発注する側とのトラブルが急増している。そこで、契約や発注者との間のトラブルに悩むフリーランスの法律相談窓口として発足したのが、「フリーランス・トラブル110番」だ。
フリーランス・トラブル110番の発足経緯
フリーランスをめぐる法整備に関しては、2023年4月28日に成立し、2024年11月1日から施行される「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス法)が話題となっているが、フリーランス・トラブル110番は、国の委託事業として、同法の整備に先駆けて2020年11月から始まった。現在、フリーランス・トラブル110番は、第二東京弁護士会が運営事業者となり内閣官房、公正取引委員会、厚生労働省、中小企業庁といったフリーランスに関連する関係省庁と連携しながら運営に当たっている。
その発足経緯について、フリーランス・トラブル110番の事務責任者で、弁護士の山田康成氏は、次のように説明する。
「厚生労働省では、テレワークをはじめとする雇用類似の働き方をする人たちの実態を把握し、法的保護の必要性を含めて中長期的に議論していましたが、2017年に立ち上げた『雇用類似の働き方に関する検討会』では、フリーランスは発注者との間に紛争が生じた際に、まず相談に行く場所がないという意見が多く出ていました。会社員なら労働基準監督署に行けば話を聞いてくれるし、労働局でのあっせん手続きもあります。
これに対してフリーランスは、雇用関係にないため相談に行っても『業務委託の場合、労働者じゃないから相談に乗れません』と言われてしまう。これでは問題があるだろうということで、フリーランス・トラブル110番がスタートしたのです」
フリーランス・トラブル110番の最大の特徴は、弁護士が直接相談に乗ってくれたり、和解のあっせんをしてくれたりすることだ。2024年7月の時点では、常に4名の弁護士相談員が電話、メール、WEB面談などで相談に対応している。
「類似の相談事業や行政機関の相談員は、業法に合致するかどうかという視点で解決策を提示するケースが大半です。一方、110番では、紛争解決へ向けて『この契約は法的にこう解釈されるのでは?』『解決するためにはこんな手段があるのでは?』というように、解決へ向けてのプロセスまでを具体的にアドバイスできます。逆にいうと、それは弁護士にしかできません。法律上、そういったアドバイスを一般人がしたら非弁行為になりますから。そういう相談事業はあまりないと思います」