OPINION1 自律的キャリア開発の5つの要件 誰にでもリソースはある 50代の「生涯キャリア」の築き方 宮城 まり子氏 キャリア心理学研究所 代表/臨床心理士
「人生100年時代」と考えれば50代はまだ中間地点だ。
しかし、「もう50代」とあきらめ、今後のキャリア形成に後ろ向きになってしまう人は少なくない。
なりたい自分やありたい生き方を自分で創っていくために、いますべきことは何なのか。
50代の自律的キャリア開発に必要なこととは。
臨床心理士の宮城まり子氏に話を聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=宮城 まり子氏提供
もう50代ではなく、まだ50代
年齢という事実は変えられない。しかし、その事実をどう捉えるか、自分の意識を変えることはできる。
「『もう50代』とあきらめるか、『いやいや、まだ50代』と前を向くか。あなたはどちらですか?」
50代のビジネスパーソンにまず問いかけたいと、宮城まり子氏は強調する。
「つまり、自分の人生の立ち位置をもう一度よく見つめ直しましょう、ということです。昔と現在とでは、50代が置かれている環境はまるで違う。これまでになく激しい変化の波に晒されているのですから」
人生100年時代となれば、個人のキャリア形成は職場や組織のなかだけにとどまらず、定年後にも長い「生涯キャリア」が続く。50代はまさにその中間地点。「組織内キャリア」から「生涯キャリア」へと移行するうえで、非常に重要な“助走期間”といっていい(図1)。
にもかかわらず、だ。研究活動の傍ら、企業内でのキャリア相談や研修にも携わる宮城氏によると、企業・組織で働く50代には「もう50だし」「どうせ50だから」と、現在の自分の立ち位置を否定的に捉える人が多いという。
「そういう人は、キャリアの価値を職位や肩書にしか見いだせない傾向が強いんですね。出世のために家族も何もかも犠牲にして頑張ってきた。それが50代になると、片道切符の出向や役職定年も視野に入ってきて、これまで自分が目指してきたものは何だったのか、となってしまいます。喪失感や空虚感を募らせ、モチベーションが低下しやすくなります」
さらに外的な要因も小さくない。昨今の労働環境や上司に求められる役割は、50代が若手・中堅だったころのそれとは大きく異なるからだ。
「そもそも50代はキャリアなんて言われて育った世代ではありません。管理職になった途端、『部下のキャリアを育てろ』とか、『自分のキャリアも考えろ』などと求められたら、それは大変ですよ」
激しい変化に戸惑い、不安を抱くのも無理はないとしたうえで、宮城氏は「でもね……」と言葉を継いだ。
「変化には自分から適応すべきで、それを不満に思い、『時代が悪い、自分たちはついていない』と他責に走るのは違うでしょう。何もしないことの言い訳であり、ネガティブな心理に拍車をかけるだけです」
人生の立ち位置をどう捉えるかは、自分しだいだ。もう50代ではなく、まだ50代―― その前向きなマインドチェンジこそが、変化を柔軟に受け止めながら先に続く長い人生を充実させるための、第一歩となるに違いない。