OPINION3 大切なのは、いかに価値ある時間にするかという志 3年は「自分のやり方で仕事を進められるようになる」までの成長サイクル 常見陽平氏 千葉商科大学 国際教養学部 准教授
「入社3年以内に大卒の3割が離職する」といわれて久しい。なぜ「3年」なのだろうか。
若者が早期離職を選択する背景と、「3年の壁」を乗り越えるために必要な環境や仕組みについて、働き方評論家で千葉商科大学准教授の常見陽平氏が自身の経験と合わせて語ってくれた。
[取材・文]=中田正則 [写真]=編集部
なぜ、新卒の3割が3年以内に辞めていくのか
「3年」について若手社員に目を向けて考えると、頭に浮かぶキーワードのひとつは離職率である。
「大卒新人の3割が3年以内に会社を辞めているというのは事実です。しかも、それは近年に限ったことではなく、何十年も続いていることです」
働き方評論家で千葉商科大学国際教養学部准教授の常見陽平氏はそう話す。
確かに厚生労働省が公開している「学歴別就職後3年以内離職率の推移」を見ても、大卒の離職率は1995年(平成7年)に3割を超えて以来、2009年(平成21年)に28.8%になった以外は、増減がありつつも3割超で推移している(図1)。1995年以前にも3割に近い水準の年はあり「、入社3年以内に3割が離職する」というのは長年変わらない事実だということがわかる。
しかし、近年、若者が離職を選ぶ背景は変化していると常見氏は言う。そのポイントは3つある。まず挙げられるのは、現在の「売り手市場」だ。
「採用手段が多様化し、転職市場が活発化しています。これまであまり中途採用をしてこなかったメガバンクや総合商社といった大企業が、積極的な姿勢に転じています。若者が3年以内で辞める大きな理由のひとつは、中途市場の広がりにより“辞めやすくなった”ことにあるでしょう」
2つめのポイントは、就職活動の早期化である。インターンシップも一般的になり、仕事と真剣に向き合い始める時期が早まっているのだ。
「大学3年生ころからインターンシップがスタートするし、有名企業、人気企業に入社したい人はおおむねそれよりも前から就活の準備を始めています。入社1年目でも、働くことを真剣に考えてからすでに3年目以上にはなっているので、入社3年以内の離職といっても、新卒者にとってはかつてほど『早期』という感覚ではなくなっているのです」
加えて、世の中のスピードが変化し、3年という期間の意味合いが変わってきていることも影響しているという。