OPINION1 人事パーソンも例外ではない 3年目以降も成長し続ける人づくりのために知るべきこと 中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
活躍できる人、できない人は、最初の3年間で何が違うのか。
人事パーソンとしての成長を考えるうえで「3年」をどう考えるべきか。
人材開発、組織開発を専門とする立教大学経営学部教授の中原淳氏に、人材開発における「3年」の意味を聞いた。
[取材・文]=井上 佐保子 [写真]=中原 淳氏提供
入社から3年間で仕事人生が決まる!?
「入社から3年間の上司との関係が13年目の昇進、給与、賞与に影響する」という衝撃的な研究結果※がある。若林満氏(当時・名古屋大学)が1987年に行った研究知見によると、入社3年間の直属上司との垂直的交換関係は、13年目のキャリア結果に対し一貫してポジティブな影響を与えていたという。他にも、日本企業の新人育成に関する研究の多くが、入社3年目までのOJTがキャリア発達に大きな影響を与えることを示している。いったい「入社から3年」に何が起きているのだろうか。
立教大学経営学部教授の中原淳氏は「3年というのはいろんな意味合いでいろんな説明ができる」と前置きしつつも、特に大きなものとして「経験学習」「コミットメント」「仕事の信念獲得」の3つを挙げた。
「経験学習という意味では、入社1、2年目は、初めての経験ばかりなので、できないことができるようになった、という成長実感が高い時期です。ところが、3年目あたりからは、経験をするだけでは成長実感が得られにくくなってくるので、今度は自分で経験を内省する経験学習サイクルを回せるようになる必要があります。3年目以降にそれができずにいると、その後も成長実感が得られず、大きな差がついてしまいます」
コミットメントが大きく下がるのも3年目だ。一般的に組織コミットメントは入社以降、リアリティショックもあって一気に下がり、3年目あたりで底をつき、その後ゆっくりと上昇していく“J字カーブ”を描くということが、神戸大学大学院の鈴木竜太教授の研究により知られている(図1)。
そして最初の3年は、仕事の信念を身につける期間としても重要だ。仕事の信念とは、『新規許容』や『顧客志向』など仕事をするうえでの姿勢や価値観のようなもので、入社後1、2年目にある程度獲得されてしまうため、もしもこの時期に間違った信念を獲得すると、その後の活躍に大きな影響を及ぼす。
「入社から3年の差は、こうした様々な要因の積み重ねによって生まれるのではないか」とのことだが、では3年目で成長が止まってしまう人と成長実感が得られるようになる人との違いはどこにあるのか。
「それは、適切なフィードバックが与えられているかどうかにあります。フィードバックといっても、日々の仕事についてのフィードバックだけではありません。キャリアに関する話ができているかどうかが重要で、これが従業員エンゲージメントに大きく関わります。ただし、これらはすべて、良い職場や良い上司に恵まれているかどうかにかかっています。新人は職場も上司も選べませんので、結局これは運によるところが大きいのです」
※ 若林満.(2006).組織内キャリア発達とその環境.経営行動科学,19(2),77-108.