キャリアと生き方│サステナブルキャリア エージェンシーを発揮して長期的に幸せになる第4世代のキャリア理論 石山恒貴氏 法政大学大学院 政策創造研究科 教授
雇用政策や人的資源管理を専門とする法政大学の石山恒貴教授がいま注目しているのが、第4世代のキャリア理論である「サステナブルキャリア」だ。
その概要と、いまこの考え方が求められる理由について、熱く語ってくれた。
[取材・文]=谷口梨花 [写真]=編集部
第4世代のキャリア理論
「パラレルキャリア」や「越境学習」、「ジョブ・クラフティング」「ギグワーク」―― 。本誌はこれまで、法政大学大学院政策創造研究科教授の石山恒貴氏に、キャリアや生き方・働き方に関する様々なキーワードについて話を聞いてきた。そんな石山氏がいま注目しているキーワードが、「サステナブルキャリア」だという。
「サステナブルキャリアは、第4世代のキャリア理論といわれています。日本では、これまで大手前大学の北村雅昭教授により『持続可能なキャリア』という名称で紹介されてきました。特に、2015年に刊行されたハンドブックで注目されるようになりました※1。
第4世代に至るまでのキャリア理論の説明は次のようになります※2。第1世代(1950-1970頃)のキャリア理論は、個人、職業、組織を分離したうえで、個人がいかに職業や組織で成功するかを考えます。そして、個人が組織か職業のどちらかに埋め込まれたものが、第2世代のキャリア理論(1970-1989頃)。これは、組織と個人のニーズが一致するという前提で、キャリアを考えるものでした。第3世代が、バウンダリーレスキャリアなど、個人に焦点を当てたキャリア理論です(1990-現在)。ただ、組織と個人が分離した結果、あまりにも個人だけが注目されてしまうという弊害もありました。そこでいま、第4世代のキャリア理論であるサステナブルキャリアが注目されるようになってきているのです(図1)」(石山氏、以下同)
※1:A.De Vos & B.I.J.M.Van Der Heijden(Eds.),Handbook of research on sustainable careers,Edward Elgar Publishing,Cheltenham,UK.
※2:Lawrence,B.S.,Hall,D.T.and Arthur,M.B.(2015)“Sustainable careers then and now,”In A.De Vos & B.I.J.M.Van Der Heijden(Eds.),Handbook of research on sustainable careers(pp.432-449),Edward Elgar Publishing,Cheltenham,UK.
オーナーシップからエージェンシーへ
サステナブルキャリアとは具体的に、仕事、家庭、友人、余暇など複数の社会空間を越境し、また、雇用形態の変化やボランティア、離職・休職、引退なども含めたキャリアや経験の蓄積を意味する。
「サステナブルキャリアは、個人は才能を持つタレントであり、可能性と独自性、仕事の意味と目的を持つ存在であると見なします。個人の独自性を尊重しながらも、個人と組織の有機的なつながりを目指すという点で、第3世代までのキャリア理論の課題を克服しているといえます」
そのなかで大切なのは、自身のキャリアをどのくらい長く続け、何を欲し、どう在りたいのかということも含め、エージェンシーを持ってキャリア経験を蓄積していくことだ。