CASE3 NEC|社員2万人が業務で生成AIを活用 生成AIは人の能力を拡張するツール まずは「活用」する意識へ切り替えを 景安泰千氏 NEC プロダクトマーケティング&アライアンス 統括部/NEC Generative AI Hubプロフェッショナル
生成AIの注目度が高まるなか、国内でいち早く法人向けに生成AIサービスをスタートしたのがNECだ。
それに先立ち今年5月からは生成AIの社内業務利用を開始し、すでに約2万人が利用している。
生成AIをどのように業務で活用しているのか。
また、その先に見える働き方やコミュニケーションの在り方などについて、同社の生成AIサービスのマーケティングを担当している景安泰千氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=NEC提供
50年以上AIの研究開発に従事
日本において外国資本の直接投資が認められた1899(明治32)年、日本初の外資系企業として設立されたNECは、現在まで120年以上にわたり、常に情報通信技術(ICT)の最先端分野で事業を展開してきた。
AI研究開発の歴史も長い。1960年代にAIの研究開発に着手、実に半世紀以上取り組み、「見える化(認識・理解)」「分析(予測・推論)」「制御・誘導(計画・最適化)」というAIを構成する3つの領域で多数のAI技術を有している。2016年にはそれらの最先端AI技術群を「NEC the WISE」と名付け、開発および活用を加速させてきた。
「“the WISE”は『賢者たち』という意味で、『ますます複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していく』という想いが込められています(」同社プロダクトマーケティング&アライアンス統括部/NEC Generative AI Hubプロフェッショナルの景安泰千氏、以下同)
今年7月から他社に先駆けて生成AIサービス「NEC Generative AI Service Menu」の提供を開始したのも、これまでのAI研究開発の素地があってのことだ。
「導入のためのコンサルティングや環境構築、リテラシー教育などの人的サービスから、生成AIのコアとなるLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)、ソフトウェア、ハードウェア、データセンターまで、ワンストップで提供できるサービスメニューを用意しています。その特徴は『高い日本語能力』と『軽量』です。弊社が開発したLLMが軽量なことによって、標準的なサーバーで動作でき、顧客の業務に特化したLLMが短期間で構築できるメリットがあります」
1日約1万回生成AIを活用
社内では、5月から生成AIの社内業務利用を開始している。そのために、安全・安心に使える体制と仕組みを2週間で構築したというから、そのスピード感には驚くばかりだ。
「自社のLLMだけでなく、Azure OpenAI Serviceをはじめとする他社のサービスも用途に合わせて利用できるようになっています。一般的な利用場面としては、メール文書、議事録、日報、資料の作成などが挙げられますね。たとえば議事録であれば、音声認識によって文字にされた内容を要約して、議事録形式にまとめてくれます。また、資料作成では、骨子のたたき台などを生成AIに考えてもらうのに役立っています」
これまで人が担ってきた業務の一部を生成AIが代替することにより、「社内資料作成における作業時間が平均30分から約15分に短縮」「1時間以上かかっていたオンライン会議の議事録をつくる作業も10分程度に短縮」などの成果が出始めているという。
「人事関連業務は私の専門ではありませんが、たとえば採用のためのジョブ・ディスクリプション案や、社員への通知文案などを作成するといったことは、容易に可能だと思いますね」