CASE3 明光ネットワークジャパン|コロナ禍で見つめ直した存在意義 「あなたはどう思う?」を大切に一人ひとりが力を発揮できる組織づくりを 山下一仁氏 明光ネットワークジャパン 代表取締役社長
「個別指導による自立学習を通じて、創造力豊かで自立心に富んだ21世紀社会の人材を育成する」という教育理念を掲げ、成長を続けてきた明光ネットワークジャパン。
同社代表取締役社長の山下一仁氏は、変化の激しい時代を生き抜くために大切なことは「一人ひとりがどれだけ力を発揮できるか」だと力を込める。
どのような思いや考えのもと、個と向き合い、個の主体性を引き出す経営を実践しているのか。
ダイバーシティ、ウェル・ビーイングという重点戦略も含めて、話を聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=明光ネットワークジャパン提供、編集部
「何をやるか」より「何のためにやるか」
まず、上記の写真を見てほしい。大のオトナが嬉々としてチャンバラ遊びに興じている。個別指導学習塾「明光義塾」で知られる明光ネットワークジャパングループの社員たちだ。
「いくら子どもに近い商売とはいえ、何事かと思うでしょう?これも、当社のれっきとした人的資本経営の一環です」と、同社代表取締役社長の山下一仁氏は胸を張る。その真意は後ほど詳しく。
「もちろんチャンバラ大会の他にも様々な取り組みを行っています。ただ、一番大事なのは何をやっているかではなく、何のためにそれをやっているか、何を成し遂げたいのか。人的資本情報の公開も、そこまで掘り下げて説明し、理解を得なければ意味がないと、私たちは考えています」
そうした方針にのっとって、同社では現在、8月期決算に伴う情報開示の準備を進めている。
個別指導のパイオニア企業である同社は1984年の創業以来、「教育・文化事業への貢献を通じて人づくりを目指す」「フランチャイズノウハウの開発普及を通じて自己実現を支援する」という2つの経営理念と、「個別指導による自立学習を通じて、創造力豊かで自立心に富んだ21世紀社会の人材を育成する」という教育理念を掲げ、成長を続けてきた。
創業者の要請を受けて2007年に中途入社した山下氏も、この理念に惹かれて転身を決意した1人だ。
「私だけでなく、全国の教室のオーナーや教室長もこの理念に共感して、当社を選んでくれています。だけど、正直言って、うちはもともと発信がうまくない。予測困難なVUCAの時代になり、学習塾や個別指導塾を巡る競争環境が厳しさを増すなかで、投資家の方からもかねて『せっかくいいことをしているのに、もったいない』と言われていました。そこでこれからも選ばれ続ける企業であるために、創業の精神をベースにしながら、改めて明光は何のために在るのか―― 自分たちの社会的存在意義をちゃんと議論して言語化し、公開していこうということになったのです」
人的資本に関する議論の高まりとともに、コロナ禍も同社が人的資本経営に力を入れるきっかけの1つだったという。