CASE 3 ヤマト運輸 イントラを活かして関係性をつなぐ 感謝や褒め合う言葉が蓄積される「満足BANK」
多くの企業が「サンクスカード」のような褒め合う仕組みを導入しているが、ヤマト運輸の「満足BANK」はイントラネット上に、その内容とポイントが貯まっていくという仕組みである。同僚はもちろん、上司と部下、先輩と後輩同士が感謝を伝え合う場となっている。
● 背景1 希薄になりがちな関係を補完
仕事や暮らしの中で身近な存在となった宅急便は、来年で40周年を迎える。企業としてもヤマト運輸は2019年に創業100周年を迎える。長い歴史を持つ同社だが、ここ15 年ほどでその体制は大きく変わってきたという。とりわけ2003 年4月より、多店舗化と事務業務の集約を進めてからは、ビジネスも働き方も多様化していった。
「昔は、宅急便の営業所といえば朝から晩まで所長がいて、かかってくる電話に応対しながら、セールスドライバーも事務スタッフもみんなでにぎやかに仕事をしていたものです」と語るのは、高橋暢晴育成戦略部長だ。
セールスドライバー職を例に挙げれば、かつては同報無線でやりとりしていたため、仲間のセールスドライバーの動きがお互いわかっていたが、よりきめ細かな顧客対応のために携帯電話を導入し、社内の業務連絡をメール通信に変えてからは、お互いの動きがわかりにくくなった。パートの勤務時間も細分化し、外国人の仲間も増えてきた。
組織の効率化も進んでいく中、どうしても社員の一体感は薄くなっていく。何か手を打つ必要があった。
● 背景2 経営方針─“4つの満足”
経営方針も背景にある。2008 年に中期経営計画の柱の1つとして掲げられたものに、「満足創造3か年計画」があった。
「この時、私たちが提供している価値は何だろうと改めて考えた結果、“4つの満足”というものに辿り着きました」(高橋氏)
「4つの満足」とは、まずはお客様、そして社会・社員・株主、それぞれに対する“満足”を創造するという考えで、今も継続して掲げている。
「4つの満足を創造し、特にお客様に喜ばれるための土台となる、社員のモチベーションを上げるにはどうしたらいいかということが、その先の議題となりました。そのためにはもちろん、叱られるより、褒められるほうがアップするだろうと、仕組みが検討されることになりました」(高橋氏)。
そして、半年ほどの検討期間を経て形になったのが「満足BANK」(満足ポイント制度)だった。
● 仕組みの概要 社内イントラ内に専用スペース
「満足BANK」は、いわば社内イントラ内のシステムだ(図)。「褒める」行為、感謝の言葉を投票し、それに応じてポイントが貯まっていく。「満足BANK」内のマイページを開けば、そうした他の人からの言葉の他、自分が誰かを褒めた文面も一覧でき、累積ポイントも表示されている。各自が創造した“満足の量と内容”をいつでも確認できるよう設計されている。
「仲間から褒められたら10ポイント。自分で仲間を褒めても3ポイントというように相互に加算されます」と、育成戦略部の畑中大輔係長はその仕組みを説明する。