CASE 2 クレディセゾン 360度評価“MAP”を自社開発 「夢中力」という独自の指標で 気づきを促し、行動を変える
“会社が求める人材”を追求し、その指標にこだわった360度評価を自ら開発したクレディセゾン。
「夢中力」を含めた指標による自他評価で、社員の気づきとパフォーマンス向上を促す。
その具体的な仕組みを聞いた。
●MAPの狙い 360度評価でパフォーマンスを高める
クレジットカードビジネスをはじめ、ネットビジネスやファイナンスビジネス等を幅広く展開しているクレディセゾン。同社では360度評価「MAP(夢中力アセスメントプログラム)」を開発し、2012年より導入している。MAPは、職務行動について、周囲のメンバーが観察・評価を行うオリジナルの評価プログラム。同社独自の指標を基に各人の特性を分析し、現在の職務における行動の発揮度合いを測定することで、各人の特徴を見つけ、パフォーマンス向上につなげるのが狙いだ。
独自の指標とは、「夢中力」と「BQ(=ビジネス感度)」。「夢中力」とは、目的に向かって情熱を継続する力、どんなことにも夢中になれる力、自分と組織を成長させる力のこと。「BQ」は、IQ(知性=論理的思考能力・知力)、EQ(理性・人間性=自分や周囲とのコミュニケーション・対人関係能力)、SQ(感性=外的刺激に対する感受能力やひらめき、気づき、観察力、直観力)を掛け合わせたものを指す。
戦略人事部長の松本憲太郎氏は、こう説明する。
「360 度評価は、もともとマネジャーを対象に人事評価の参考情報にするために行っていました。しかし、オリジナルのものではなかったので、もっとクレディセゾンらしいものをつくって、社員全員を対象に導入したいと考えるようになりました。弊社では、2000 年代前半から、“夢中になれば何でもできる”という考えの下、『夢中力』という言葉を重視し、採用選考の中でも『夢中力タイプ』の診断を行っていました。ですから、この『360度評価』と『夢中力タイプの診断』をミックスさせて、社員が自分の強みや弱み、特徴を知って、行動変容につなげられるような仕組みにできないかと考えたのが、当社オリジナルのMAP誕生のきっかけといえます」
夢中力タイプとは、もともと同社内で活躍している人材100人程度をピックアップし、共通する特性をデータ化して、7つのタイプに分けたものだ。採用選考における夢中力タイプの診断は、合否に直結するわけではないが、人材のタイプをバランスよく採用したり、社風に合い、なおかつ活躍できる人材かどうかの参考にするために活用している。
一方、360度評価では、自分が周りからどう見えているのかを知ることができる。
「同じ人でも、例えば部署が変わると、評価が変わることは決して珍しくありません。周囲の環境や人との関係性は絶えず変化しますから、その中で、自分をさらに進化させていくというのがMAPの考え方です」(松本氏、以下同)
自分に見えている自己と周囲から見た自己の違いという気づきにより、行動を変え、自己成長につなげていくという、「ジョハリの窓」の考え方を参考にしている。
「現時点では、人事評価には一切使用していませんから、報酬と連動することもありません。異動の参考にしている程度です。だからこそ、皆、本音で相手を評価できるというのもあるし、評価される側も素直に結果を認め、受け入れることができている面もあると考えています」