第30回 人生後半戦は恩返ししたい 私らしく「みんなと生きていく」 水野真紀氏 俳優
初代「きれいなおねえさん」として大ブレーク後、ドラマやCM、映画、バラエティーなど幅広く活躍されている水野真紀さん。
48歳で大学に編入学し、幼稚園教諭免許、保育士資格を取得して話題になった。
大学編入のきっかけやキャリアについて話を聞いた。
[取材・文]=谷口梨花 [写真]=中山博敬
[衣装]=PAULE KA、アオイ(ワンピース、靴)、ABISTE(アクセサリー)
30年越しの夢を実現して大学生に
―― 48歳で聖心女子大学文学部教育学科に編入学し、幼稚園教諭の免許を取得。昨年は保育士資格も取得したことが話題になりました。
水野真紀氏(以下、敬称略)
実は、幼稚園教諭の免許を取ろうと思って大学生になったわけではないんですよ。人生の折り返し地点にさしかかった43歳のころ、「残りの人生、どんなふうに生きていきたいかしら?」と考えるようになりました。台本を覚えるにも若いときの5倍10倍、時間がかかるし、仕事は確実に減っていきます。ここで、自分の人生をきちんと考えた方がいいと思ったのです。「俳優は待つのが仕事」とよく言われるのですが、私はのんびりと待つことができない人間なんでしょうね。
若いときに、作詞家の阿木燿子さんに「仕事が軌道に乗っていろんな人によくしていただくのですが、どうお返ししていいかわからない」と相談したことがありました。そのとき阿木さんからいただいた言葉が、「今何かお返ししようと考えずに、年を取ったときに若い方に還元すればいいのよ」。その言葉にも背中を押され、人生後半戦は若い方に何か還元したいと思うようになったのです。
―― 聖心女子大学に編入学することを選んだのはなぜですか。
水野
社会への還元と同時に、自分の人生の落とし物を拾いにいくという思いもありました。実は、聖心女子大学は高校時代に受験を考えていた大学なんです。ただ、当時は「東宝シンデレラ」オーディションで審査員特別賞を受賞し、事務所にレッスンを受けさせてもらっていたので、2年間で学業が終わる短大へ進学しました。そんなことを思い出してホームページを見ていたら、聖心女子大学が編入学を受けつけていると書いてあるではありませんか!「いつか編入試験を受けよう」と決意したのが44歳のときでした。
子育てで感じた教育の大切さ
―― 仕事をしながら大学に編入学するのは大変だったのでは。
水野
GOサインを出すには、周囲の状況も大事。自分がよくても誰かがマイナスになってはダメなので、タイミングは見極めました。ドラマの仕事が調整でき、夫の選挙と、息子の中学受験が終わる47歳のときに自分にGOサインを出し、48歳で編入学しました。