HR TREND KEYWORD 2026 経営│EVP(Employee Value Proposition;従業員価値提案) 社員の働く価値を再定義することが人財戦略の核心となる 中村彰秀氏 JTB グループ本社 人財開発チーム シニアコンサルタント(企画担当) |小澤 碧氏 JTB DEIBチーム DEIB担当マネージャー
中村彰秀氏
人材の流動性が高まり、働く価値観が多様化する今、企業は「選ばれる」存在への変革が急務だ。その鍵となるのが、従業員への提供価値を再定義する「EVP」である。
コロナ禍を機に組織風土を抜本的に見直し、「会社主導」から「自律支援」へと舵を切ったJTB。心理的安全性とキャリア自律を軸とした変革の軌跡から、EVP実践のヒントを探る。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=JTB提供
「交流創造事業」を支えるEVPの出発点
JTBといえば?「旅行会社」と誰もが答えるだろう。
創業は古く1912年。訪日外国人誘致を目的として設立された「ジャパン・ツーリスト・ビューロー」に端を発する、言わずと知れた旅行業界の最大手だ。交通・宿泊券の代売から始まり、様々な商品・サービスの開発提供を通じてツーリズム産業の発展を牽引してきた。
しかし、その事業ドメインは今や「旅行」の枠にとどまらない。
「より広く『交流』をつくることがJTBの使命。私たちは『交流創造事業』と定義しています」と、同社人財開発チームシニアコンサルタントの中村彰秀氏は説明する。
「『交流創造』とは、人と人、人と地域、人と組織の出会いと共感を、サステナブルにつくり続けることを意味します。具体的には、旅行者の満足と課題解決に資する祖業のツーリズム事業に加え、地域の持続的発展を支えるエリアソリューション事業、企業のエンゲージメント向上を促進するビジネスソリューション事業と、大きく3つの事業軸を展開。グローバル領域も掛け合わせながら、シナジーを追求しています」
「キーワードは『つなぐ・つくる・つなげる』。デジタルも重要ですが、最終的にこれを実現するのは人の力以外の何物でもありません」
中村氏の言葉どおり、JTBグループでは、この「交流創造」という持続的な価値創出の源泉を「人財」と明確に位置づけ、「交流をつくる『人』を輝かせる」ことを人財開発の基本理念に据えている(図1)。

現行の人財計画が策定されたのは2022年。「このとき、会社がやるべきことと社員自身がやるべきことを、次のようにきちんと分けました」と、中村氏は振り返る。
「社員には、『ONEJTBValues』という共通の価値観に心から共感し、グループ経営方針を体現する『自律創造型人財』を目指すことを求め、一方で会社は、社員の個性や多様性を尊重し、成長・挑戦の機会を提供する。そして、エンゲージメントの高い、イノベーティブな組織風土の構築に努める、と明文化しました。ここが当社の『EVP』の出発点。JTBグループで働く『価値』を、会社が社員に提示し、約束したわけです」

