テクノロジー×人材育成の可能性 「スキル」と「目標」を共通言語に一人ひとりの自律を促す 伊達洋駆氏 ビジネスリサーチラボ 代表取締役 他
テクノロジーは、人材育成の領域でも存在感を増している。
両者をかけ合わせることで、可能になることがたくさんあるのではないか。
そこで、ITを活用した製品やソリューションを提供するNECソリューションイノベータと人材育成事業を担う日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)が、意見交換を行った。
ビジネスリサーチラボの伊達洋駆氏のファシリテートのもと、現状の課題、目指す育成の在り方やそのために必要なことを明らかにする。
[取材・文・写真]=編集部
自律的な学びにつなげるゲーミフィケーションの取り組み
伊達
NECソリューションイノベータは、ゲーミフィケーションを取り入れた学びのシステムを開発されています。まずは現在までの取り組みについてお聞かせください。
田村
「個人の個人による個人のための人材育成」をコンセプトに、新人育成のためのシステムを開発し、社内で活用しています。根幹の機能は「個人のスキルの可視化」で、スキルを「まなぶ」「つながる」「まきこむ」「ねばる」といった11の能力に分類しています。研修などの教育やアセスメントなどを受けると、データが自身のアバターに反映され、該当する能力のパラメータ値が上がっていく仕組みです(図1)。パラメータ値が上がるほどキャラクターが成長し、モンスターを倒すような仕掛けもあり、RPGのように楽しめるシステムになっています。
弊社には、人材開発の課題や施策をディスカッションする委員会があり、「トップダウンで指定した教育を受けさせても前向きに取り組まない」という課題があがりました。自律的に学ぼうという意欲を持ってほしい、楽しみながら成長してほしいという想いがあり、4年前からゲーミフィケーションを使った人材育成の取り組みを行っています。
道上
ゲーミフィケーションは挑戦や行動変容を促す手法のひとつです。モチベーションを高め、楽しみながら継続してほしいという私たちの目的にも適っています。
伊達
「個人の個人による…」というコンセプトは、リンカーンの言葉からきていますよね。つまり人材育成にも民主化の原則を取り入れようということ。会社が主導してきた人材育成を民主化させたいという想いが込められていると感じます。
この取り組みは、スキルをきちんと定義し、教育と連動させているのが特徴ですね。スキルと教育は人材育成を考えるうえで大事な要素です。
田村
この開発は、プログラム教育の一環として新人社員研修のカリキュラムに入れています。取り組みの初年度は新入社員が自分たちで開発し、翌年度以降は毎年、新入社員が自分たちのほしい機能を追加したり強化したりしながら、システムをブラッシュアップさせています。
モチベーションを持って取り組みを継続してもらうため、最初のチーミングには気を使っていて、プログラミング経験の有無、性別や国籍など、バランスを見ながらチーミングを行っています。また、2年目、3年目の社員にメンターの役割を担ってもらい、新入社員がいつでも相談できるサポート体制を整えています。
森川
新入社員研修に取り入れたことで、コロナ禍で対面の機会が減るなか、新人同士のコミュニケーションの増加につながりました。同期で一緒に取り組む意識が芽生え、それがモチベーションになるという相乗効果が生まれましたね。