社長と“人事”がタッグを組んで改革をリードする 髙橋秀仁氏 レゾナック・ホールディングス 代表取締役社長
2023年1月1日、 昭和電工と昭和電工マテリアルズが統合し、統合新会社「レゾナック」が誕生した。
統合に伴い、 人事の在り方を抜本的に見直した。
髙橋秀仁社長に新会社の目指す姿、必要な人材について話を伺った。
[取材・文]=村上 敬 [写真]=山下裕之
機能性化学メーカーに求められるのは共創できる人
―― 現在の経営課題と、その解決に必要な人材について教えてください。
髙橋秀仁氏(以下、敬称略)
経営のゴールは企業価値の最大化です。我が社はポートフォリオカンパニーなので、まずポートフォリオ戦略が重要です。それに個人の力、そして組織の力を掛け合わせることで企業価値を最大化できると考えています。人材については、まさにポートフォリオ戦略に合った人材を育てることが我が社の人的資本経営の基本になります。
具体的には、共創型人材の育成です。我が社のポートフォリオ戦略をひと言でいうと、総合化学メーカーから機能性化学メーカーへ。総合化学メーカーは装置産業であり、コモディティを効率よくつくることが大切なので、上意下達で成り立ちます。しかし、機能性化学メーカーになると、お客様や素材の会社と刷り合わせをしながら共創する必要があります。ポートフォリオの整理は2025年くらいにひと段落させるつもりですが、共創型人材を育てるにはあと5年はかかると踏んでいます。
―― 2022年1月の社長就任時、「人材育成にすべてを懸ける」と表明しました。人材育成を主導するにあたり、どこから着手しましたか。
髙橋
グローバルカンパニーと日本の会社の一番の違いは人事です。日本の会社の人事は、組合対応と、制度をつくることが主な仕事。それに対してグローバルカンパニーのHRは、リーダーシップ教育やサクセッションプランニング、文化の醸成やタレントマネジメントが中心です。こちらにシフトさせるために、まず人事をHRという名前に変えて、人事部長ではなくCHROを置きました。
CHROは、新しい経営体制の目玉の1つです。実はCHROになった今井(のり氏)は人事経験ゼロで、昭和電工と日立化成の統合交渉のときの私のカウンターパートでした。日本の人事経験のある人を立てると、結局日本の人事になってしまう。必要なのはビジョンの共有と、そのビジョンを実現するリーダーシップがあるかどうか。その点で彼女が適任でした。「本気で改革するから、最初に刺されるとしたら僕と今井さんだよ」と話したら、「刺されても大丈夫」と返ってきて、それだけ肝が据わっているなら大丈夫だなと(笑)。
4つのバリューを浸透させるための取り組み
―― 育てたい人材像について教えてください。
髙橋
会社として4つのバリュー―― 「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」―― を定め、これらのバリューを持っている人を育てます。バリューを浸透させるために、昨年は70拠点を訪問し、私やCHROが自分の言葉で語るタウンホールミーティングを61回、少人数で直接議論するラウンドテーブルを110回行いました。
今年からバリューの観点を目標管理制度にも取り入れました。バリューと成果の2軸で見たときに、両方いい人は引っ張り上げる。バリューは体現できているけど成果が出ていない人は、再教育や配置転換でセカンドチャンスを与えます。バリューも成果も出ていない人は、うちの会社にいてはいけない人なのでコミュニケーションをとっていきます。
問題は、バリューはないけど数字のいい人。日本の会社は、このタイプの人を「いないと回らないから」といって許してしまいますが、それを許すとバリューが崩れてしまう。レゾナックバリューを重視する文化を守るために、そういった人材は「No」だということを社長の立場から示していくことも私の仕事だと考えています。