第28回 「気負わなくていいんだよ」と伝えたい SEの現場経験と育児との両立を強みにあらゆる個人の“働きやすさ”を追求する 油田さなえ氏 パナソニック コネクト 人事総務本部 DEI推進室 室長/現場ソリューションカンパニー 人事部 部長
20年弱SEとして働き、6年前に人事に異動したDEI推進室室長の油田さなえ氏。
現場を知る人事として、また、同社ではまだそれほど数が多くない管理職ワーキングマザーとして、経験に即した制度や仕組みを積極的に導入している。
目指すのは、一人ひとりがもっと働きやすくなる社会。
等身大の働く1人の女性の目線で、自身の存在意義や仕事への想いを語ってくれた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=山下裕之
人事中心でない体制でDEIを推進
パナソニックグループでは、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)にEquity(公平性)の理念を加えたDEIの推進に、グループを挙げて取り組んでいる。8つの事業会社のなかでも、その推進体制からしてユニークなのが、B2Bソリューション事業の領域を担うパナソニックコネクトの活動だ。
「私たちDEI推進室とともに、チャンプ(CHAMP)とよばれる各事業場のDEI推進リーダーからなる体制で活動を進めています。DEI推進室は人事総務本部内の組織ですが、DEI担当役員は、1人が経理財務部門で、もう1人がマーケティング部門の役員。つまり、人事ではないトップがDEI活動を統括する形で、これが当社DEIの大きな特徴の1つです」と語るのは、人事総務本部DEI推進室室長を務める油田さなえ氏である。
油田氏によると、職場でのDEI実践を主導するチャンプについても、「人事以外からメンバーを出すこと」を原則として、推進室から各事業場へ人選を依頼しているという。
「活動を引っ張るのが人事だけでは、どうしても人事目線に凝り固まって現場と乖離しやすいからです。また、当社には様々な部門や拠点があり、それぞれDEIの課題やスピード感も違う。人事の論理だけで、現場を一律の制度や施策に縛りつけるのは得策ではありません」
まさにEquity=公平性の視点といっていい。それは、油田氏自身もキャリアの大半を人事畑以外で過ごしてきたからこそ、身についたものかもしれない。入社以来20年弱、システムエンジニア(SE)として勤務し、6年前にコネクト社現場ソリューションカンパニーの前身組織の人事部へ異動した。「正直に言うと、異動当初は衝撃を受けました」と油田氏は打ち明ける。
「人事の人はSEの仕事や現場のことをこんなに知らないのか。知らないのに、人事制度を考えたりしていたのか、と。大きな壁を感じましたね」