個を活かす│DEI 「平等」ではなく「公平性」を重視した人材戦略 DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン) 盛山 光氏 パナソニック ホールディングス 戦略人事部長
近年、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」に「エクイティ(公平性)」を加えた「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)」が注目されている。
「エクイティ」を加えることは、どのような意味を持つのか。また、企業の取り組みはどう変わるのか。パナソニックホールディングスの戦略人事部長、盛山光氏に聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=パナソニック ホールディングス提供
「エクイティ」に込めた想い
2022年4月に持株会社制へ移行し、パナソニックホールディングスと8つの事業会社で構成されるグループ体制になったパナソニックグループ。 1965年に日本企業としていち早く週休二日制を導入、2001年に「女性かがやき本部」を設置し女性登用の取り組みを推進、2006年には在宅勤務制度を導入するなど、多様性推進に先駆的に取り組んできた。
かねてから「D&I」を掲げて取り組みを推進してきた同社は、現グループCEOの楠見雄規氏が代表取締役に就任した2021年に「DEI」(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)ポリシーを新たに掲げた(図1)。
「パナソニックグループは、創業以来の理念である『物と心が共に豊かな理想の社会』を実現するために、『多様な人財がそれぞれの力を最大限に発揮できる最も働きがいのある会社』を目指しており、その手段としてDEIを推進しています」
そう話すのは、パナソニックホールディングス戦略人事部長の盛山光氏。同社では、2019年に楠見氏の次期社長就任が決まったころから、D&Iの取り組みを今後どうしていくか、ディスカッションを行ってきたという。もともとの「D&I」をなぜ「DEI」に切り替えたのか。その背景には、強い想いがあった。
「『ダイバーシティ』というと、女性やLGBTQ(性的マイノリティ)、障がい者といったマイノリティの痛みを取り除くことが目的になりがちですが、我々は、本来目指すべきは『インクルージョン』、つまり、『挑戦する一人ひとりが個性を発揮し、組織として活かしあうこと』だと考えています。しかし、たとえば昇格試験など、選考プロセスの負担が大きいといった理由で挑戦をあきらめざるを得ない人たちもいました。そこで、『インクルージョン』を実現するためにも、一人ひとりに対する機会の提供の公平性を追求する必要があるだろうと。そうした我々の強い想いを込めて、『エクイティ』を加えたのです」
その考えの裏付けともなったのが、女性活躍を支援する社内有志のグループである「Panasonic Women’s Network(PWN)」が行った、「社内で今までに受けたペイン(痛み)」に関するアンケート結果。その内容から、現場にはまだインクルージョンを阻むペインがあるということが、事実として見えてきたという。
また、2021年にグループ&グローバルで社員にアンケートを取った結果でも、「個性に応じた挑戦や活躍の機会の公平性」に対する期待が高かった。そのような背景もあり、同社はエクイティに強い想いを込め、DEIに舵を切ったのだ。