CASE1 イオン|ワークライフバランスの悩みを解決! 学びを通して行動がともなう“イクボス”へ 髙野雅子氏 イオン ダイバーシティ推進室 室長代行
働き方改革や職場の多様化に戸惑う管理職は多いが、ダイバーシティやワークライフバランスの方法を学ぶことで彼らの育成や支援を進めることもできる。イオンの取り組みを取材した。
働き方を見直す管理職改革
部下のワークライフバランスを考え、キャリアと人生を応援しながら自らも仕事と私生活を楽しみ、なおかつ組織の結果も出す上司、通称「イクボス」。イオンでは2016 年から管理職を対象にイオン独自の「イクボス検定」を実施。ますます難しくなる管理職の役回りへの理解を進め、意識改革を図っている(図)。
働き方改革の取り組みが進むなか、部下の勤務時間に配慮した、最適なマネジメントができない管理職も少なくない。逆に、部下の残業を減らそうと、自分が負担を抱えてしまう管理職もいる。
プレイングマネジャーが増え、管理職自身の働き方も長年、問題となっていた。同社の場合、2013 年に行った調査で、「9割の女性がリーダーになりたくないと思っている」という結果が明らかになっている。要因として浮かび上がったのは、長時間働くことが評価される職場環境への不安だ。昇進昇格と引き換えにプライベートを犠牲にしてきた管理職は多いだろう。
このような管理職たちをイクボスに変身させる取り組みは、どんなきっかけで始まったのか。ダイバーシティ推進室室長代行、髙野雅子氏は次のように説明する。
「当初は女性活躍の観点からワークライフバランスに取り組んでいたのですが、やがてこれは女性だけでなく組織全体の問題なのでは、と気づきました。誰もが生き生き働き、暮らせる環境をつくらなければ、管理職も部下も能力を発揮できません。制度を整えることももちろん大切ですが、個人の意識を変えることが先ではないかと。そのためにはまず、管理職自らイクボスを目指し、率先垂範すべきではと考えたのです」
管理職の学び① イクボス検定
イクボスを育てる施策はいくつかあるが、主なものは2つ。「イクボス検定」と「イクボス個人賞の表彰」だ。イクボス検定は、イオンのイクボスとして必要な知識・行動について問うもので、パソコンやモバイルで手軽に受験できるのが特徴だ。毎月19 日をイクボスの日と決め、21日までの3日間を試験実施日としている。
「対象はグループ各社の管理職。初級はこれまでに約2万人が受験しており、合格率は80%に達しています。『育児休暇、介護休暇は何日取れるか』といった質問に4つの選択肢から正解を選ぶ、ごくシンプルなテストです。インターネットや本で調べて回答することもできます。知識を問うというよりは、興味をもってもらうきっかけにしたい、というのが狙いですね。