おわりに 研修転移にはよい“共犯者”が必要
最後までお読みいただきありがとうございました。今後の参考のために、アンケートにお答えください。「特集の内容に満足いただけましたか?」―― ここまでお読みいただいた読者の皆さんは、もうこの設問に意味がないことを知っている。いや、大半の方は気づきながらもこれまで変えられずにいたのではないか。
本特集はそんな研修評価の実態を踏まえたうえで、在るべき姿を考えるきっかけとしたい、そんな想いからスタートした。島村公俊氏(OPINION1)は研修評価がアップデートされなかった背景として、無難に評価を済ませたい人事部門と現場と外部の研修会社の間で生まれる一種の“共犯関係”を指摘した。しかし、人的資本経営が進むなか、研修をはじめ、費やした費用に対してどれぐらい効果があったのか、人材育成が正しく行われているかを見る目はいっそう厳しくなるだろう。
研修評価で何を測るべきか
先の設問のような満足度ではなく、研修評価で測るべきものは何か。
島村氏は「研修評価とは研修転移を測定することだ」と述べた。研修転移とは「研修で学習されたことが、各自の職場で実践され、成果につながっていくこと」を指す。とはいえ、学習したことを職場で1、2度再現したぐらいでは、それを研修転移とみなすことはできない。本人が自発的に行動を変える「行動変容」が見られてこそ、正しく研修転移されたといえる。
では、行動変容とはどのようにして起こるものなのだろうか。鈴木竜太氏(OPINION3)は行動変容を起こすためのアプローチとして①価値観や考え方を変革する、②マニュアルやルールを変更する、の2つを紹介する。研修では①の方法をとることが多いが、心掛けが変わったからといって、必ずしも行動を変えられるわけではない。そのために、仕事の仕組みやマネジメントなど、職場環境も大きく影響しそうだ。