CASE3 TKC|新入社員研修で実践 現場の上司や他部門を巻き込んだ研修効果を高めるための仕組みづくり 田中康義氏 TKC 執行役員 経営管理本部 人事教育部 部長
会計事務所や地方公共団体に特化したシステム開発・コンサルティングを提供するTKC。同社はコロナ禍を機に研修制度の見直しに着手し、研修評価についても改善を図った。
ポイントは、研修の学びを現場で活かし、成果に結びつけるための仕組みづくりだ。一連の改革を主導する執行役員の田中康義氏に、施策の概要を聞いた。
[取材・文]=増田忠英 [写真]=TKC提供
営業の責任者から人事の責任者へ
TKCでは2018年に、採用・教育・人事を一手に担う人事教育部ができた。その責任者に就任したのが、執行役員の田中康義氏。全国の営業職の支援をする営業本部で責任者を務めてきた田中氏は、初めて人事教育部門に配属され、次のような違和感を感じたという。
「営業の世界では当たり前だった費用対効果や目標といったものが、研修に関しては明確ではなく、いったい何をゴールとして行っているのか、私にはよくわかりませんでした」(田中氏、以下同)
研修の効果測定も、研修終了後に受講者に取るアンケートに基づいて判断されていた。
「研修直後にアンケートを取ると、ほとんどの受講者が主催者に気を使って『良かった』と答えるのが普通でしょう。その確認だけでは不十分ではないかと思いました」
従来の研修のやり方に疑問を感じていながら「人事や教育についてはド素人でした」という田中氏は、就任後、人材育成に関する様々な書籍や論文を読んだり、外部セミナーへの参加などを通じて知識を深め、社内研修の見直しに着手した。
「折しもコロナ禍になり、集合研修がやりにくい状況になったタイミングを利用して、より効果の高い研修に組み立て直すことにしました」
新入社員研修をリニューアル
最初に見直したのが新入社員研修である。2021年度から新たに始められた研修は、およそ1年をかけて実施するものになっている。その概要は次の通りだ(図1)。