CASE1 三菱ケミカル|人事制度改革はビジョン実現の手段 ジョブ型雇用が実現する公平性・透明性のある処遇と報酬 杉浦史朗氏 三菱ケミカル 総務人事本部 労制人事部 他
17年4月に三菱化学・三菱樹脂・三菱レイヨンが統合して生まれた三菱ケミカル。
統合を機に進めた人事制度改革の柱の1つが、ジョブ型雇用の導入だ。
ジョブ型雇用導入により実現した、「透明性のある処遇・報酬」について、人事制度改革PJを率いる杉浦史朗氏と綿引優里氏に聞いた。
人事制度改革は中期経営計画の戦略の1つ
三菱ケミカルは、三菱ケミカルホールディングスグループの経営方針「Forging the Future 未来を拓く」を基に、事業戦略を遂行している。人事制度改革は、その戦略の1つだと総務人事本部労制人事部の杉浦史朗氏は話す。
「当社グループは、これまで培ってきた総合化学の力で、世界規模の環境・社会課題を解決し、人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくことを表す“KAITEKI”を実現することを目指しています(図1)。そうした在りたい姿を実現するために、人事制度改革に着手することになったのです」
人事制度改革が必要になった背景には、事業環境の変化も大きいと杉浦氏。
「これまでは、雇用の無限定システムとも言うべき日本的雇用慣行が運用されていました。社命で異動や転勤をしなければならない代わりに、与えられた仕事をしていれば、ほぼ自動的に昇給昇格をして、長期雇用の保障があるというものです。ある意味、『社員の人生フルコミット』のシステムと言えるでしょう。高度経済成長期の競争優位を支えてきたと考えられ、この仕組みそのものを否定するわけではないのですが、市場環境の変化により、これらの制度は必ずしもうまく機能しないと考えています。
これからは、多様な個人が意欲を持ち生産性高く働くことができる仕組みの実現が、会社に成長力をもたらすでしょう。今回の人事制度改革は、そういった時代のニーズを反映したものでもあります」
透明性ある処遇・報酬のためのジョブ型雇用
同社の人事制度改革の3本柱は、「主体的なキャリア形成」「透明性のある処遇・報酬」「多様性の促進と支援」だ。
「既存の事業基盤を揺るがしかねない環境変化のなかでKAITEKIを実現するためには、会社と社員が互いに選び、活かしあう関係を構築し、ともに成長していく文化を形成しなければいけません。3つの柱は、KAITEKIを実現するための鍵となるものです。『主体的なキャリア形成』では、社内公募制や若手社員が希望部署の選考を受けられるキャリアチャレンジ制度を設け、上司のサポート体制も強化しました。また、『透明性のある処遇・報酬』では、職務や貢献によるメリハリのついた処遇・報酬体系に変更しています。『多様性の促進と支援』では、定年年齢の引き上げや福利厚生のカフェテリアプラン化とともに、育児・介護などとの両立を支援する制度を拡充しました。
これら3つは独立したものではなく、相互に連動させながら運用していくことが成果につなげるためのポイントだと考えています」