経営学習研究所×音楽座ミュージカルイベント 「世界初!?アガサ・クリスティー原作ミュージカルを用いて『新たな学び』を創ろう!」
2022年7月23日に行われた、経営学習研究所主催のイベント「世界初!? アガサ・クリスティー原作ミュージカルを用いて『新たな学び』を創ろう!」
経営学習研究所の理事である田中潤氏のファシリテーションや中原淳氏のアドバイスのもと、音楽座ミュージカルとコラボレーションし、ミュージカル『SUNDAY(サンデイ)』を用いた研修づくりを行った。
本稿では、その内容の一部を紹介する。
[取材・文]=長岡萌以 [写真]=山下裕之
考えさせるためのモヤモヤや違和感
本イベントの主催である経営学習研究所(以下、MALL)は、「日本を学習大国にする」というスローガンのもと、人づくり・組織づくりを進めるための様々な企画を催している。本イベントにも、人事・人材開発部門担当者や研究者等、人材育成に関する様々な層の参加者が集まった。
冒頭では、MALLと、ミュージカルカンパニー・音楽座ミュージカル(以下、音楽座)との出会いについて、MALL理事であり立教大学教授の中原淳氏がこう語った。
「10年ほど前、私がまだ東大に勤めていたころ、インタラクティブ・ティーチングの講座をつくるときに音楽座さんに協力いただいたことがきっかけです。演劇の力を用いて、どのような場づくりができるのか―― 。その後、MALLと音楽座では、新人研修に演劇やミュージカルを活用するといったイベントなどを行ってきました」
MALL理事であり本イベント主催の田中潤氏によれば、MALLでは同じことを行わないことをモットーとしているが、音楽座との共同企画は今回で6回目だという。音楽座には、どのような魅力があるのだろうか。田中氏と中原氏は、それを「モヤモヤする」ところだと語る。
「スッキリしないんですよ。観ていると、これってなんのことを言っているのかなとモヤモヤ考えさせられる。スカッとしないんですが、じわじわくるんです」(中原氏)
「スッキリしないというのは、研修も同じですよね。すべきことを指示するような、指し込む研修のつくり方もありますが、あえて違和感を感じさせて、考えさせるという研修のつくり方もあります。そうした研修は、満足度アンケートをしても結果が低い。でも、それでいいんです」(田中氏)
本イベントの参加者に与えられたお題は、音楽座の作品『SUNDAY(サンデイ)』を学びの素材として研修をつくること。本作は、『春にして君を離れ』(アガサ・クリスティー著)を原作とするミュージカル作品だ。今回の企画について、音楽座の俳優でプロデューサーの藤田将範氏はこう語った。
「モヤモヤする作品づくりが可能となるのは、組織の在り方やプロセスが独特だからです。我々はこの方法を『ワームホールプロジェクト』とよんでいるのですが、代表を中心に、俳優もプロデューサーもプランナーも、キャリアや立場を超えて、自分はこんな作品にしたいと意見を出し合いながら作品をつくっています。内容だけではなく、集客やチーム活性化など、作品に関するすべてについて一人ひとりが全責任を背負う形で話し合っていく。そうして自分事化し、綿密な刷り合わせを行うことで、独特な作品が生まれるのです」
全員がフルコミットした作品づくりを行うに至ったのは、初代代表・相川レイ子氏の意志だった。相川氏は、それを可能とするために、カンパニーメンバー皆がコミットできるよう団体の経済的基盤の安定にも注力したという。