CASE2 両備システムズ|経験学習を軸にしたトレーニー育成制度 新人を早期戦力化に導く「チームで育てる」仕組みと風土 三宅生子氏 両備システムズ 総務・人財統括部 人財戦略部 エキスパート
両備システムズは、入社時から3年間、4人1組のチームで新入社員を育成する
トレーニー育成プログラムを導入している。
目的は「チームで働く力」を身につけること。
コロナ禍で個々の孤立化や成長を実感しづらい環境が懸念されるなか、
経験学習を軸に据えたこのプログラムのもとで、同社の新人は上司や先輩との関係性を深め、早期に戦力化されている。制度の概要を聞いた。
[取材・文]=平林謙治 [写真]=両備システムズ提供
スキルより、チームで働く力を
「コロナ禍それ自体の影響よりも、いわゆるZ世代の特徴がコロナ禍によって助長されたようなイメージがありますね」
取材時、両備システムズは折しも新入社員研修を終えたばかり。それだけに、同社総務・人財統括部人財戦略部エキスパートを務める三宅生子氏の言葉にも、ある種の実感がこもっていた。
「コロナ禍入社組」とよばれる入社3年目までの若手社員は、ちょうどZ世代の先頭集団と重なる。実際に研修などで接してみて、三宅氏は、彼らのどういう部分に顕著な特徴を感じたのだろう。
「一般によく言われることですが、Z世代は不安定なVUCAの時代を生き抜くために、手に職をつけたいという専門的なスキルへのこだわりが強く、コロナへの不安がそれに拍車をかけている気がします。弊社が手掛ける事業が、変化や競争が激しい業界だから、というのもあるでしょう。配属面談でも、自分がどんな仕事をしたいかよりも、とにかくITスキルを持ちたい、高めたいという声が圧倒的に多くて……」
同社は、岡山県を中心に交通運輸事業をはじめ幅広く事業を展開する両備グループの、ICT部門を担う中核企業だ。新入社員からスキルアップに貪欲と聞くと、特に仕事に生き生きと取り組むワーク・エンゲージメントの観点では心配はないように思える。しかし、「スキルだけではダメなんです」と三宅氏の見方は厳しい。
「弊社社員の大半はSE職ですが、どんなに開発力があっても、ひとりでできる仕事はまずないですからね。周囲と協力しながらプロジェクトを回していく力がないと働けないし、生き生きと仕事に取り組むことは難しい。新人にはまず、『チームで働く力を持ちましょう』としつこいくらい伝えています」
両備システムズでは現在、「トレーニー育成プログラム」とよばれる、入社時から3年間の若手社員教育を実施している。コロナ禍入社組は、今まさに本プログラムの只中にいるわけだが、実はこの施策は、コロナ禍を機に導入されたわけではない。始まったのは2019年で、それまで実施していた「トレーナー制度」という新人教育の旧制度が形骸化してきたことから、改革に踏み切ったという。
チームで経験学習を徹底する
「前の制度では、新入社員に年齢の近い先輩=トレーナーが張り付き、2人1組で3年間OJTに取り組みましたが、運用がトレーナー任せになってしまい、負担が大きくなっていたんです。先輩社員も権限がないので、どこまで教えていいかわからないのに、他の人の関与がほとんどない。トレーナーによって、熱心にやっているペアとそうでないペアとの差が激しいのも問題でした」
そうした反省点を踏まえ、トレーナー制度から、現行の「トレーニー育成プログラム」へ。名前の変更が示すとおり、トレーナーひとりに頼る新人教育ではなく、あくまで学ぶ側の新入社員=トレーニーを中心に、その成長を複数の先輩社員が支えるという体制を目指した(図1)。「チームで働ける人財を、チームぐるみで育成しよう」という発想である。