達人に聞く 対話のコツ ダイドードリンコ/三菱鉛筆/アスクル/東京カウンセリングセンター
毎日、仕事を進めるうえでは、さまざまな「対話」がある。
顧客との対話、チームでプロジェクトを推進するための対話、顔の見えない相手との対話、カウンセラーの対話……
さまざまな場面での対話の達人に、対話でのコミュニケーションのコツを聞いた。
ダイドードリンコ 【営業の達人】
雑談から始まる対話が本音の信頼関係を築く
競争力を付けるための対話力
飲料の製造から販売管理までを行う当社では、売り上げチャネルの9割以上は自動販売機。他社の飲料メーカーでは平均4割程度ですから、非常に珍しい形態だといえます。
だからこそ、良い条件の立地に当社の自動販売機、いわば“小売店”を建てていくことが重要になってくるんです。ところが今は市場が飽和状態で、特に現在私が営業展開をしている私鉄の駅構内「エキナカ」は、大手各社がしのぎを削って販路拡大を図っている状況です。
その中で自社を差別化し、競争力を付けるためには、きちんとお客様と本音のコミュニケーションがとれていること、心が通じ合っていることが肝心になってきます。それには、いかに相手の状況を読み取り、適切な提案ができるかが問われると考えています。
対話に踏み込むタイミングがある
相手のニーズを感知し、本音での対話をするといっても、やはりそれまでにはある程度時間をかけステップを踏む必要があると思います。
私は、初めてお会いしたお客様には、自分からは仕事の話をしないように意識しています。いきなり核心には触れず、「最近どうですか」から始まって、世間話や業界情報などを話しながら、相手の要望や状況を把握することに終始するんです。
そのうち相手から「仕事の話をしなくていいんですか?」といってくる場合があるのですが、その時がチャンス。相手が仕事の話へと踏み込む準備ができたということですから、そのタイミングを逃さないよう、こちら側から伝えたいことを話すようにしています。
やはり初対面のうちは相手のガードが固くなるわけですし、特に自動販売機の設置は一度契約すると、長期的な取り引きになるため、当然慎重にもなります。
その状況で、こちらが自分の都合だけを押し付けてしまっては、相手に面倒くさがられるだけ。相手の立場に立って考えてみれば、自分が言葉を発するタイミングというのがあるのではないでしょうか。
対話力はテクニックで磨かれない
世間話や「今はこういう容器が売れていますよ」といったような業界情報を話すのは、ある意味テクニックや知識でどうにでもなるもの。私も新人の頃は口八丁で相手に訴えかけようとしていました。
しかし、やっぱりお客様と深い取り引きをするには、自分が本当に思い入れを持って踏み込まなくてはならないと思うんです。自分が本音で向き合わない限り、相手も本音をさらけ出してはくれないし、さらには仕事を推進していく段階になった時に、口先だけでは信頼関係は築けません。
まず真剣に相手の話に耳を傾けて、相手を理解する。そうした対話を重ねることが、お客様とより良い関係をつくり出すのだと信じています。
向井 正訓 氏
広域法人営業部 係長
1995年に入社、東京支店の営業所に配属。開発課を経て、2002年に社内公募にて営業開発部に異動。現在は広域法人営業部にて私鉄のエキナカを中心とする、自動販売機の流通・拡大を手掛けている。