第23回 原点が支え続けたキャリア すべては「地域のため」人のくらしと想いに寄り添う 石井亮氏 コープデリ生活協同組合連合会 人事教育 統括部長
自宅に美味しい食材を届ける宅配事業等、人々のくらしに密着した取り組みを展開する地域生協の連合会であるコープデリ生活協同組合連合会。
人事教育 統括部長を務める石井亮氏は、高校卒業後に宅配の現場からキャリアをスタートさせた“たたき上げ”だ。
その誠実な歩みと軌跡を聞いた。
生協の本質を学んだ現場時代
28年前、ある団地の片隅で若者は途方に暮れていた。高校卒業後、地元の生活協同組合(旧ちばコープ)に就職し、宅配の現場へ出たばかり。注文どおりに品物をさばくのに精いっぱいで、新規の組合員(生協加入者)を増やすまでとても手が回らなかった。
「ほうれん草と小松菜を間違えるような石井少年には相当ハードルの高い仕事でしたよ」
苦笑しながら振り返るのは、現在1都7県の6つの会員生協から成るコープデリ連合会で、人事教育統括部長を務める石井亮氏である。
「お勧めするにも、団地の主婦の皆さんと何をどう話していいかがわからない。高校を出たばかりで、話術も何もありませんからね」
そんな石井氏を救ってくれたのはベテランの組合員さんだった。
「どうすれば新規加入を増やせるかわからなくて、正直に聞いてみたんです。○○さんはなぜ生協に入ったんですか、入ってどうですか、と。そうしたら、『ついてらっしゃい』なんていって、団地の中でまだ加入していないお宅へ、お母さんたちが案内してくれたんですよ。一軒ずつ、僕の代わりに説明までしてくれて。実際に利用している人の言葉だから説得力が段違い。僕のお勧めより、はるかに効果がありました」
生協の何が喜ばれているのか。どういう特徴が地域の生活者の役に立っているのか。「組合員さんから教えられて初めて自分たちの活動の意義や優位性が肚に落ちました」と石井氏は語る。仕事への迷いも晴れていった。新規加入を毎月何件増やすか目標が決められていたが、成績はあくまでも結果にすぎないと思えるようになったからだ。