Chapter1 様々な分野から見る学び ⑤アウトプット・精神医学 黄金比率は3:7 自己成長につながる アウトプット+振り返り 樺沢紫苑氏 精神科医/作家/映画評論家
「本も読んでいるし、セミナーも受講しているのに、成長実感がない」
―そんな人が見落としているのが、知識をインプットした後のプロセスだ。
学びを自己成長につなげる秘訣について、精神科医で作家の樺沢紫苑氏に聞いた。
情報は使わないと忘れる
学びというと、本を読んだりセミナーを受講したりといった「インプット」ばかりイメージしがちだが、実は違う。「書く」「話す」「行動する」という「アウトプット」があって、初めてインプットしたことが学びになる。
樺沢紫苑氏は「人間の脳は重要な情報だけを長期記憶として残し、あとは忘れてしまうようにできています。重要な情報とは“使われる情報”のこと。つまり100冊の本を読んでも、内容を活用しなければ時間のムダ、お金のムダになってしまう。勉強しているにもかかわらず、知識が身につかない人は、“インプット過剰、アウトプット不足”に陥っている可能性があります」と指摘する。
コロンビア大学の心理学者、アーサー・ゲイツ博士の実験によれば、もっとも効果的な学習につながるインプットとアウトプットの黄金比率は「3:7」(図1)。インプットしたらその倍はアウトプットすべきであることがわかる。
アウトプット術① 読書感想文
とはいえ樺沢氏によれば、必ずしも長い時間をアウトプットに充てなければならないわけではない。短時間でも効率的にアウトプットする方法はいくらでもある。ここで、樺沢氏が勧める手軽なアウトプット術を3つ紹介しよう。
1つは読書感想文を書くこと。箇条書きでもかまわない。基本構成は、「この本を読む前の私は○○でした」「この本を読んで私は、△△に気づきました」「今後、××を実行していこうと思います」の3つ。余裕があれば肉づけしていく。所要時間は数分程度、長くて15分くらいといったところだろうか。たったこれだけの作業で、内容の定着度はぐっと高まる。
文章を書くときは端末に入力するより手書きがお勧めだ。手、口、喉などの筋肉や運動神経を使うことで、「運動性記憶」として長く記憶に残りやすくなるからである。
「指先を動かすとき、脳は複雑で高度な活動をしています。実際、手書き中とタイピング中の脳の動きをMRI(磁気共鳴画像)で見て比較すると、手書き中の脳では、ブローカ野という言語処理にかかわる部位が明らかに活性化している。プリンストン大学、カリフォルニア大学の共同研究でも、タイピングより手書きのほうが記憶に残りやすい、という結果が明らかになっています」