ART 日本美術家列伝 室町~江戸時代前期篇 光琳に比肩するデザイン性と深い教養をたたえた作品を多く残した尾形乾山 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
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尾形乾山は光琳の6歳下の弟である。兄の盛名に隠れた地味な存在に見られがちかもしれないが、美術史上の重要性は兄に負けないものがある。
光琳が遊び人だったことについては前回ご紹介したが、乾山は対照的に堅実な性格だったようだ。早くから生きる道を陶芸に定め、京焼の大成者野々村仁清に学んで腕を磨き、37歳で京都の西北に位置する鳴滝に窯を開いた。西北を乾と呼ぶことが、彼の雅号の由来である。
そのような生き方は兄とは少し異なるが、作風には近いものが感じられる。その1つが平安朝以来の古典文学の教養を踏まえていることだ。図版に取り上げた『銹絵染付金彩絵替土器皿』は、満月に薄(すすき)や帆掛け船、梅の花などの和歌にしばしば詠まれるモチーフで飾られている。このような皿を食器として使うことができた彼の顧客たちは、さぞかし優美な気分に浸ることができただろう。