ART 日本美術家列伝 室町~江戸時代前期篇 市井の風俗を描き、浮世絵の礎を確立した菱川師宣 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
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菱川師宣は当世風俗を描く江戸の浮世絵の始祖とされる絵師で、その名は代表作『見返り美人図』とともに広く知られている。民間の絵師なので、生年などの履歴にははっきりしないことが多いのだが、他の浮世絵師に比べれば、重要な絵師と認識されていたためか比較的資料が残されている。
江戸を本拠とした絵師のトップバッターは、師宣より20年早く没した狩野探幽になるのだろうが、狩野派は全国で仕事をしているので、新興都市江戸土着の絵師ということになれば、師宣は最初の世代と言ってよい。