OPINION3 明確な役割分担と専門性が鍵 グローバル企業に学ぶ日本の組織のためのHRBP 中島 豊氏 日本板硝子 CHRO/日本人材マネジメント協会 会長
欧米企業の間では2000年前後から導入が進んできたHRBP(HRビジネスパートナー)。
その役割とは何か。そして、どのようなスキルや育成が必要なのか。
また、日本の組織がHRBPを導入するにはどうすればよいのか。
長らく外資系企業を中心に人事を担当し、HRBPの実情に詳しい日本板硝子CHROの中島豊氏に聞いた。
3ピラー・モデルとHRBPの役割
1980年代から現在まで、外資系企業を中心に8社で人事業務に従事し、ビジネススクールで人的資源管理に関する教歴も持つ中島豊氏は、「HRBPの考え方は2000年前後にアメリカで広まった」と話す。契機となったのは、ミシガン大学のデイビッド・ウルリッチ教授が著書『MBAの人材戦略』(JMAM)の中で示した「3ピラー・モデル」(ウルリッチ・モデル)だ。
「ウルリッチ教授は、人事部門が従来の管理業務にとどまらず、経営に貢献することの重要性を説きました。そのために、人事組織を3つの柱に分けること(=3ピラー・モデル)を提唱したのです」
3つの柱とは、シェアード・サービス、CoE(Center of Excellence)、そしてHRBPである(図1)。1990年代後半から、アメリカでは給与計算や社会保険などの定型業務を外部に委託、あるいは社内に統合した部署をつくって集約するシェアード・サービスの動きが進んだ。そして、人事部門に残った業務のうち、様々な制度や施策の企画をCoEが担い、その運用をHRBPが担う。HRBPは事業部のビジネスパートナーとして、人事制度に関するCoEへの依頼や運用のフィードバックなども行う。
「HRBPは、CoEが設計した人事制度などの様々なツールを、うまく現場に適応させていく役割と言えるでしょう」
人事部門を3つの柱に分けることは、人事のリスク管理やガバナンスの面で重要だという。
「かつては、人事のトップがやりたいように制度を企画・運用し、監督機能が働かないケースがよく見られました。こうした事態を防ぐため、3つの柱が互いに牽制し合うことによって、人事が正しく機能するようにモニタリングする効果があります」
たとえばHRBPは、CoEが企画した制度が事業や社員のためになっているかどうかをチェックし、現場を無視したり行きすぎた制度にならないよう牽制する役割を担う。一方、HRBPだけに任せてしまうと、現場に都合のいい部分最適な運用になってしまう可能性がある。それに対して、CoEが全社的な観点から牽制する。また、独立した立場のシェアード・サービスは、コストの観点からCoEの施策やHRBPの運用をチェックする役割を担う。