OPINION2 自社なりにHRBPの定義を 現在地点から考える人事改革の起こし方 福村直哉氏 デロイト トーマツ グループ パートナー 人事機能変革部門 副事業責任者 他
変化のスピードが加速する時代、ジョブ型雇用に舵を切る日本企業が増えつつある。
現場の裁量権を拡大する分権化も昨今のトレンドだ。
複雑化する現場の課題に人事はどう向き合っていけばいいのか。
HRBP(HRビジネスパートナー)に求められる役割や、業務への落とし込み方について、デロイト トーマツ グループのパートナーである福村直哉氏、ディレクターの嶋田聰氏に聞いた。
欧米で誕生した背景とは
事業の戦略実現に向けた組織・人材戦略の提言者、そして実行者であるHRBP。
「HRBPとは、言わばビジネスにおける組織・人事領域のTo beを描き、課題を解決する役割。当社では戦略機能、企画機能と捉えています。カンパニー長、事業部長、機能部長などとディスカッションしながら、ビジネスの成長に合わせた人材ポートフォリオの把握・組み換えや、採用、育成などの人材マネジメント全般の施策立案・実行を行います」と福村直哉氏(以下、福村氏)は説明する。
そもそもHRBPは欧米発祥だ。誕生の背景について嶋田聰氏(以下、嶋田氏)は、次のように説く。
「欧米企業の場合、人事における意思決定や施策推進は、本社人事部ではなく事業側に任されている比重が高い。他方、人事・組織マネジメントの難易度は高く、事業の現場における組織人事の課題解決を担うスペシャリストが求められたのは自然といえます」
欧米のHRBPは、どのような課題を背負っているのだろうか。
「第一に、欧米企業は長期雇用が前提ではありませんから、人材の流動性が高い。したがって常にリテンション(定着)が課題になるし、事業継続を担保する後継者育成計画の必要性も高い。ロイヤルティーが醸成されづらいという問題もある。風土、カルチャー変革によるエンゲージメントの維持が不可欠といえますね。しかも処遇が横並びでないので、人事評価、報酬への納得性をどう担保するかも大きな課題です。また、年功序列ではありませんから、若いリーダーも多く、人材マネジメントや組織の力学といった点で、彼女彼らの相談相手となるのもHRBPの仕事です」(嶋田氏)
組織そのものの統廃合といったダイナミックな変化が多く、イレギュラーな人事対応もしなければならない。日本企業も終身雇用や年功序列といった日本型雇用システムが急速に変化しており、ジョブ型雇用や実力主義が広がっている。伝統的なメンバーシップ型を踏襲してきた企業にも変容の兆しが表れているのではないか。
「右肩上がりの経済成長期は、言ってみれば金太郎飴のように画一的な人材を育てていけばよかった。事業部も余裕があり、部長がビジネスを回しつつ人事のことも考えていた。しかし、今は変化のスピードが速く、現場はビジネスで手一杯。人材のニーズも急速に多様化しています」(福村氏)
もちろん、HRBP設定の要否や具体的な役割は一律ではなく、以下の項目にどれほど「当てはまる」・「当てはまりつつある」かを軸に、検討してもよいのでは、と嶋田氏。
・人材の流動性が高い
・長期雇用は前提ではない
・処遇が実力主義(抜擢・降格が常態)
・ダイナミックな組織である(リストラも含め変化が多い)
・若いリーダーが多い