第22回 立ち止まったのは、私自身の声を聴くため 1色だけじゃない人生を味わう 藤原しおり氏
「地球上に男は何人いると思っているの?――35億」。
キャリアウーマンに扮したネタで、大ブレイクをしたブルゾンちえみさん。
2020年にその華やかなステージを降り、現在は「藤原しおり」さんとして、等身大の生活を発信し多くの支持を集めている。
彼女の悩みと葛藤、私らしく生きる人生について聞いた。
ブレイクを経ても変わらなかった自分
―― ブルゾンちえみさんとして大変なご活躍をされていました。2020年3月に引退をなされて、いまのお気持ちはいかがでしょう。
藤原しおり氏(以下、敬称略)
どう表現していいのか迷うんですけど、私、自分で“引退”って言ったことないんですよ(笑)。ただ事務所を辞めただけなんだけどなぁと思っています。だからといって、引退していませんと強く訂正するつもりもなくて。私の状態は、私を見た人が自由に決めてもらえればいいのかなと思っています。辞めることに理由が必要なの?と思いますし、実際、何かをするために辞めたわけではありませんから。
―― ブルゾンちえみさんは、悩める女性へのアドバイスを強い口調で言い切る様子が印象的でした。
藤原
私は普段、上から目線ではっきり物事を言ったりできないんですよ。だから仮面舞踏会をしているような感覚で、私が普段できないことをできるのが気持ち良かったです。学生時代も今も、恋愛の優先順位も低いですし(笑)。恋愛に興味のない私が指南をしているという、自分で自分が笑える感覚もありました。昔から私を知っている学生時代の友達も笑ってたんじゃないかな。だから今は、さっさとネタばらしをしちゃった感じはありますね。あのキャラはステージ上の3分のネタ。1日のうち3分だけあの人になれる。ブルゾンちえみは特別な自分でした。
―― 昔から人を笑わせることが好きだったと伺いました。
藤原
それもよく言われているんですけど、小学校6年生くらいからなんですよ。それ以前は、実は生きづらかったんです。自分は普通に生きているつもりだけど人間関係がうまくいかないというか。どうやったらもっと可愛がられるんだろうって。2歳下の妹は近所のお姉さんたちに可愛がられるけど、私は違いました。変なことをしているつもりはないんだけどなって、いろいろ考える時間が小学5年生くらいまであって。
父親がコーチだった影響で陸上を始めたんです。髪型もショートにして、気持ちが明るく変わったんですよね。そこからお笑いにもハマッて、面白い人って思われて周りを笑わせることが一番の喜びになりました。そうしたら人間関係がうまくいきはじめて、人付き合いはこうすればいいんだという自分の形ができたんですよね。だから私の根っこは6年生から変わっていないかもしれません。
いま、地元の友達や、友達の家族に会っても「本当にしおは昔から変わらんなぁ」って言われるんですが、うれしいですね。芸能界というちやほやされる世界にいて変わったって言われたら最悪でしょう(笑)。