第20回 ディー・エヌ・エー 新拠点『横浜オフィス』(神奈川県・横浜市)
コロナ禍によってテレワークが浸透し、働き方が大きく変わった。
必ずしも1つの場所に集まる必要がなくなったいま、オフィスの在り方や出社そのものの意味も変わろうとしている。
今回はいち早くオフィス戦略を変更した企業を訪れ、その考えを伺った。
2021年8月、これまでの本社機能を渋谷と横浜に分割したディー・エヌ・エー(以下、DeNA)。コロナ禍を契機として、テレワークを織り交ぜた柔軟性の高い働き方の実現に向け、今回の決断に至った。移転プロジェクトは2020年末に立ち上がり、候補地の選定を経て、2021年2月には社内決済が承認。その約半年後には移転を完了するという異例のスピードで実行された。
フリーアドレス下での生産性を高める概念「Nest」
渋谷の新本社はコワーキングスペース『WeWork渋谷スクランブルスクエア』内に位置する。基本はフリーアドレス制だが、営業部門など業務内容によってはグループアドレス制を採用した。また、フリーアドレス内に「Nest」という独自の区画を設けているのも興味深い。Nestとは直訳では「巣」だが、ディスカッションしたり、高め合い学び合う集いの場を意味する。
「自席に腰を据えて仕事をするのが従来のオフィスであるとすれば、当社では、『仕事として何を生産するか』を重視し、オフィスは手段として利用するものと捉えています。その考えに根差して生まれたのが『Nest』です。区画をプロジェクトベースで割り当てます。
たとえば、ライブストリーミングサービスやゲーム開発の現場では、日々新しいメンバーが参加し、新しい施策が次々と投下され、方針の変更も頻繁に起こります。こうした成長過程の真っ只中にあるチームの場合、テレワークよりも対面の方が生産性が高い場合がある。『Nest』を割り当て、メンバーが集まりやすくすることで、プロジェクトの円滑な運営を促しています」(ヒューマンリソース本部人事総務部総務グループの角壯志氏)
なお、「Nest」では、チーム全員の出社は想定しておらず、メンバーの約3分の1の区画(総勢20名のチームであれば8席分)を期間を区切って割り当てる仕組みとなっており、より広いスペースが必要となった場合や、プロジェクト終了など、チームの拡大や縮小が生じた際には、区画から“巣立って”いくこととなる。