第7回 グローリー 百年記念会館 (兵庫県・姫路市) 稲水伸行氏 東京大学大学院 経済学研究科 准教授
どのような空間ならば、「学び」は促進されるのか。
オフィス学を研究する東京大学大学院経済学研究科准教授の稲水伸行氏が
企業の研修施設をめぐり、学びを促進させる工夫を解説する。
交流と挑戦のキッカケに
雨が降ると、屋根から落ちる雫が庭の白石に滴り落ち、ぴしゃぴしゃという音が心地良く耳に響く。そんな風情を感じさせる造りまでこだわった、グローリーの研修施設「百年記念会館」。創業100周年イベントの事業の1つとして従来の研修施設を建て替え、姫路市の本社敷地内に2018年11月に設立した。
「弊社は1950年に硬貨計数機を開発するまでは不景気のあおりを受け、倒産の危機もありましたが、そんななかで創業者は、どうしても新製品を生み出したいと『求める心とみんなの力』を企業理念に掲げてきました。その精神を受け継ぐためにも、この研修施設は、新たなことに挑戦するキッカケを生み出す場、様々な交流・出会いが生まれる場にしたいというコンセプトで設立しました」(総務本部人事部人材開発グループの野﨑祐一氏)
背景には、研修が従来の講義型から新しいスタイルに変化したこともあるという。
「研修施設は勉強しに来るところではなく、議論や意見交換を行う場に変わってきています。また、企業規模が大きくなるにつれて、縦と横とのつながりが希薄になってきました。そういう意味でも、交流のきっかけや新たな発想を生む“場”として機能する施設にしたかったのです」(総務本部人事部部長の八津谷吉博氏)
この施設には、コンセプトを体現する多様な仕掛けが施されている。さっそく紹介していこう。