第2回 グローバルと日本のマネジャー育成の差 有沢正人氏 カゴメ 常務執行役員/CHO|中原 淳氏 立教大学 経営学部 教授
一筋縄では解決ができない人事・人材育成のお悩み。
今日もまた、中原淳先生のもとに、現場の「困った!」が届きました。
今回のテーマは「グローバルリーダーの育成」。
前号に引き続き、カゴメCHOの有沢正人氏と共に、リアルな現場のお悩みに答えていきます。
20代後半にはリーダー人材の選抜を
中原
有沢さんは外資系グローバル企業でのご経験を踏まえ、どうお考えになりますか?
有沢
まず「グローバルリーダー育成」という言葉に違和感を持ちますね。外資では「グローバル人材」というよび方はしません。入ったら皆、グローバル人材です。ですが、英語が必須というわけではありません。求められるのは、コミュニケーション能力、異文化を許容できる力、そしてアントレプレナー的な感覚……といったものであり、国内リーダーとグローバルリーダーを分けて考えることに意味を見いだせません。
中原
同感です。グローバル人材=英語が堪能な人、というのはもう違いますよね。最近は研究者も人工知能の翻訳ソフトを使って英語の論文を読んでいたりしますし(笑)。また、ビジネスのマーケットも中国、アフリカ、南米など英語圏以外へ移ってきていて、もはや英語が必須ともいえない気がします。ところで、外資系グローバル企業では、どのようなリーダー育成が行われているのでしょうか。
有沢
私が以前いた外資系企業では、全役員が集まって、各部門から推薦を受けたハイポテンシャルな若手について、どう育成していくか話し合う育成会議を毎年行っていました(図)。対象者は何百人といるのですが、一人ひとりについて付箋で「強み」と「弱み」を貼り出し、強みをどう伸ばすか、弱みをどう克服するか、そのためにはどこでどんな経験をさせればいいか、侃侃諤諤議論するのです。日本の場合は弱みの克服ばかりを考えますが、長所を伸ばすことを考えるのが日本と違うところです。
中原
全役員が集まって若手一人ひとりの育成について、真剣に話し合うとは、すごいですね。選抜は何歳からですか?
有沢
28歳ごろからです。育成会議では一人ひとりのキャリアプランを考え、役員はそれを直接本人にフィードバックすることが求められます。役員自身が課長手前の若手の育成に関わっているわけで、人材育成がとても重視されていると感じました。
日本では年功序列で選抜が遅く、40代ごろまでずっと同じペースで上がっていきますが、残念ながら、これでは遅すぎるのです。ご質問のなかには「年功序列の旧体制で国内リーダー育成の運用はできている」とありますが、年功序列の旧体制自体が課題となっているから遅れを取っているのではないでしょうか。