CASE.2 太平洋セメント 教育体系を刷新 若手と管理職、双方への教育でグローバル人材を早期育成
日本国内の人口減少に伴う売り上げ減少を見据え、グローバル展開を強化する太平洋セメント。“人材の崖”といわれる中堅の人材不足を育成によって補う一方で、次世代経営幹部育成の一環として管理職にMBA系知識の学習を義務づける。教育体系を刷新した同社の取り組みを紹介する。
●背景 環境の変化と“人材の崖”への対応
今年4月、グローバル人材教育を含む“新教育体系”の運用をスタートした太平洋セメント。その背景には、セメントの国内需要の縮小があると人事部長の舟久保陽一氏は言う。「国内需要のピークは1990 年で約8,630万トンでしたが、それが2010 年には約4,160万トンに。つまり20 年間で半分以下に減っています。ここ数年は、震災復興需要と自民党政権の国土強靭化計画により若干持ち直していますが、日本の人口減少が確実なこともあり、今後の国内需要の飛躍的な伸びは考えがたい状況です」
2010 年に事業構造改革に着手。生産体制の見直しを行い、一部工場のセメント製造を中止するなど国内での生産能力を23%減らし、1,000名弱の人員削減も行った。その一方で、海外事業並びに非セメントのマテリアル事業(資源事業や環境事業など)を強化。さらに、2011年に発表した中期経営計画を受けて取り組んだのが、教育体系の見直しだ(P47 図表)。「 グローバル化に関していうと、実は弊社は明治時代から海外に目を向けている会社なんです。殖産興業政策が進められる中で、弊社のセメント事業はスタートしました。当時は高価なセメントを輸入して国内のインフラ整備に当たっていましたが、その後、“我が国の泥土をもって外国の金貨を獲得する”という社是を掲げ、自前でのセメント製造を開始し、海外へのセメント輸出も始めました。したがって、海外に目を向けること自体は弊社のDNAに刻まれているので、ほとんど抵抗感はありません」
とはいえ、現在の売り上げにおける海外比率は、ここ数年の円高の影響もあって2割ほどだという。
「外貨ベースでの海外における売り上げは、毎年着実に伸びているので、今後はできるだけ早いペースで25 ~30%まで伸ばしたいと考えています。そのためには、グローバルに活躍できる人材を数的にも質的にも確保しなければなりません」
現在、海外に駐在する社員は約80名。国内で海外事業を手掛ける約40名を加えた120 名前後の社員が、海外ビジネスに直接的に携わっている。「こうした人材は当然ながらローテーションさせていく必要がありますから、120 名の2倍もしくは3倍程度の予備軍がいないと回りません。工場直接職場を除く間接職場の社員は約1,000名。弊社ではコース別人事制度を採用しており、勤務する地域を限定しているL(ローカル)コースと、国内外を問わずどこでも働く意思のあるG(グローバル)コースとに分けていますが、スタッフ部門1,000 名の中で管理職並びにGコースを選択している社員はおよそ800 名。全員がグローバル人材であることが理想ですが、それは現実問題としてなかなか難しいので、120 名の3倍に当たる360 名、つまり管理職とGコースのうち半数ぐらいは、いつでも海外で勤務できるような体制にしていきたい、というのが私の考えです」
ここでひとつ問題となるのが、社内で“人材の崖”と呼ばれる太平洋セメント特有の事情だ。