ART 日本美術家列伝 室町~江戸時代前期篇 布教と修行の旅に生き、無数の仏像を彫り続けた円空 矢島 新氏 跡見学園女子大学 教授
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これまでの連載は絵描きのみを取り上げてきたが、ようやく立体造形家に登場いただくことになった。造形家の人生がある程度追えるようになるのは室町時代以降と言ってよく、この連載でも雪舟をトップバッターに据えたのだが、かつて日本美術史の主流であった仏像彫刻はこの頃になると精彩を欠くようになり、世俗的な主題も表現できる絵画が中心となってくる。そのような理由もあって、名の知られる彫刻家は少なくなってしまったのである。
江戸時代前期を生きた円空は、生涯12万体の像を彫ったとされる僧である。それまで仏像は仏師と呼ばれる専門家が制作していたが、仏像制作を職業としていたのではない円空を仏師と呼ぶわけにはいかず、まして今風に立体造形家などと呼んでいいはずもない。円空は造仏聖や作仏聖と呼ばれることが多いが、あくまで民間への布教に努めた真摯な宗教者であり、仏像制作はその手段であった。