ART 日本美術家列伝 最終回|厳しい修行に耐え、行脚の中、「微笑」をたたえた仏像を彫り続けた木喰 矢島新氏 跡見学園女子大学 教授
人材開発担当者にご紹介したいエンタメ情報です。
仕事の合間の息抜きにぜひ!
この連載は、残念ながら今回で終了することとなった。最終回に誰を取り上げようか迷ったが、筆者の専門とする宗教美術の分野から、笑みを浮かべた仏像を彫ったことで知られる木喰に登場いただくことにした。
享保3(1718)年生まれとする通説に従えば、木喰は数えで93歳まで生きている。江戸時代としては異例の長寿だが、本格的に仏像を彫り始めたのは晩年になってからなので、主要な作品は、18世紀の後半から19世紀の初頭にかけて制作されている。木喰80歳代のことである。まれにみる晩成型の表現者であった。
木喰は山梨県の山間の小さな集落に生まれ、若くして江戸に出て、苦労を重ねたという。22歳で出家し、45歳で主要な穀類を絶つ木を受けている。この厳しい行を行う行者は木食(僧)とよばれたが、本稿の主人公は名乗りに口偏を付けた木喰の字を用いたので、木喰が固有名詞として使われるのである。