OPINION2 多様な人材が能力を発揮できる環境をつくる 「Society 5.0 for SDGs」推進のために人事がすべきこと 長谷川 知子氏 日本経済団体連合会 常務理事
革新技術を最大限活用することにより経済発展と社会的課題の解決を両立させる「Society 5.0 for SDGs」を提唱し、企業のSDGsへの取り組みを後押しする経団連。
Society 5.0時代に求められる企業の在り方と求められる人材、そして人事・人材開発部門の役割について、常務理事の長谷川知子氏に聞いた。
「Society 5.0 for SDGs」とは
経団連では、「Society 5.0」の実現を通じてSDGs達成を目指す「Society 5.0 for SDGs」を活動方針の柱に据えて活動している。
「Society 5.0」とは、人類がこれまでたどってきた狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続き、2030年に向けて実現を目指す第5の社会を意味し、政府の成長戦略にも位置づけられているコンセプトだ。経団連常務理事の長谷川知子氏は、Society 5.0について次のように語る。
「Society 5.0は、IoT、AI、ビッグデータなどの革新的なデジタル技術を活用する人間中心の創造社会であると経団連では考えています。多様な人々によるイマジネーション(想像力)とクリエイティビティ(創造力)を掛けあわせることにより、グローバル社会が直面している課題に対して、革新技術を最大限活用しながら課題を解決し、新たな価値を提供していくことが、Society 5.0の目指す社会です。そして、人間中心の社会であることと、地球社会が直面している課題の解決を目指すという意味では、まさにSDGsが目指す方向性と同じです。Society 5.0の実現を通じてSDGsを達成することによって、企業も成長でき、多様な人々のウェルビーイングも実現することができると考えています」(長谷川氏、以下同)
こうした考えのもと、経団連では、SDGsが掲げる17の目標それぞれに対して、デジタル技術を用いてどのようなソリューションを生み出せるか、会員企業の優良事例を集めている。さらにSDGsの掲げる169のターゲットにも紐づけて、経団連の特設ウェブサイト(https://www.keidanrensdgs.com/home-jp)を通じて情報提供を行うことで、様々な企業・組織間のコラボレーションやオープンイノベーションの促進を図っている。
さらに、コロナ禍により、以前から進行していた経済的格差や地球環境問題、さらには日本におけるデジタル革新の遅れといった諸課題が浮き彫りになった。この状況を踏まえて、経団連は昨年11月、それまでの株主至上主義の形に終止符を打ち、新たに「サステイナブルな資本主義」を掲げた「。(ピリオド)新成長戦略」を公表した。
「資本主義が真にサステイナブルになるには、企業がステークホルダーの多様なニーズや価値観を取り入れ、対話を通じて新たな価値を協創していくことが重要だと考えています。その鍵となるのがDX(デジタルトランスフォーメーション)です。デジタル技術を最大限駆使して課題を見いだす一方で、課題解決を図る際の価値のバランスをステークホルダー間で調整するのは人間です。DXを使いこなしながら、人間中心で課題解決、価値創造を図っていくことが必要だと考えています」
「。新成長戦略」では、2030年の未来の姿について、5つのステークホルダー─生活者、働き手、地域社会、国際社会、地球環境─ごとに目指す価値や、どのような価値の協創を目指すかを整理し、2030年までにサステイナブルな資本主義の確立を目指すことを掲げている(図1)。