おわりに データドリブン“戦略”人事への道
今後の人事部門の在り方について、「人事部門に残るのは、戦略人事部分」と話したのは大湾秀雄氏(OPINION2)だ。大湾氏によると、今後は人事の分権化により、採用や育成権限は事業部に移管していくという。また、オペレーション業務はAIに取って代わられると言われるようになって久しい。今の人事部門は、経営戦略の実現に貢献することが求められている。
これまで小誌でも折に触れて言及してきた観点だが、今回の切り口は「データドリブン」。ATDのケイパビリティ・モデルでも示されたデータ&アナリティクスを用いることで、人事はどのように経営への貢献を果たせるのだろうか。
BI・AIを使いこなす
データ分析においては、BI(ビジネスインテリジェンス:意思決定のためのデータ分析ツール)とAI(人工知能)それぞれの特性やメリットを理解して進めたい。
NECマネジメントパートナー(CASE1)では、BIとAIの双方を導入することで改革を進めた。経営計画を基点にエンゲージメントサーベイの分析を始めた同社だが、BIツール使用にはコミュニケーションコスト削減の効果があったという。年齢別・職種別といった条件をその場で変えて見ることができるため、必要なデータをその場で取得し、施策の検討に活かせるからだ。OPINION3の渡部良一氏はこのBIの機能を、「条件を変えながら何度も分析と検証を繰り返して洞察を深め、課題や仮説に対するストーリーを築き上げる」ことに有用だと話す。思考のスピードを止めないことはデータ分析のみならず、アジャイルに物事を進める必要があるビジネスシーンにおいて重要な要素と言えよう。また、渡部氏の紹介するデータビジュアライゼーションの基本も必ず押さえたい。データから読み取れる意味や事実が正しく伝わることは、BIツールの活用同様、コミュニケーションを円滑にする効果がある。