第16回 ギブ&ギブで世の中の役に立つ 社員一人ひとりの能力発揮を目指して 中村 純也氏 新生銀行 執行役員 グループ人事部GM
メガバンクとも地銀とも違う、独自の立ち位置を確立する新生銀行。
旧・日本長期信用銀行の経営破綻、リーマンショックを機に欧米流の経営体制から日本型組織運営とのハイブリッド体制へ――波乱万丈を乗り越えてきた同行のグループ人事部GM・中村純也氏は、穏やかに熱く、人材育成を語ってくれた。
アンコンシャス・バイアスに克つ
自分は“人”と真摯に向き合っているか――。コロナ禍で初めて迎えた年末年始。新生銀行執行役員グループ人事部GM(部長)の中村純也氏にとって、自宅で家族と過ごす時間は思いがけない“内省”の機会となった。
「チアダンス部に所属する娘たちが面白半分で、NiziUのダンスを教えてくれました。もちろん踊れないし、まったく覚えられません(笑)。そのとき、ふと思ったんですよ。私のような中高年のサラリーマンは、職場では自分がえらいような気でいるけれど、一歩世間に出れば、自分にできないことなんて山ほどある。一方、それが得意な人材もたくさんいる。会社でも同じだろうと。当たり前のことなのに、ずっと組織のなかにいるとなかなか思い至りません」
そう語る中村氏が現職に就任したのは昨年(2020年)4月。それまでに人事畑の経験はないが、「今でも多様な人材に恵まれている当行グループには、機会さえあれば伸びる人材が多い。各自が得意な分野で存分に力を発揮できる環境を整えたい」と、目指すビジョンは明確だ。理想を実現するために、自身が人事リーダーとして心掛けていることは何かと尋ねると、印象的な答えが返ってきた。
「我々古いサラリーマン社会で育った世代にありがちな思い込みや勝手な決めつけ――いわゆる“アンコンシャス・バイアス”に縛られず、いかに人と真摯に向き合い、相手の話を聞けるかが鍵だと思います。娘が私に『ダンスを教えてあげる』といって自分の得意分野をアピールしてくれたように、会社でも、たとえば若い人たちが『中村さん、これどうですか』と、新しい情報などをもってきたりするときは、何かしら私への働きかけであることが少なくありません。それを、今の自分の仕事には直接役立たないからと決めつけて、聞く耳をもたないのでは、自身も伸びず、伸びるはずの相手も伸ばせないでしょう。彼ら彼女らの成長を後押しできる機会を逃さないよう、アンコンシャス・バイアスの克服を肝に銘じています」
何げない日常の経験から気づきを導き出す、中村氏の柔軟な発想は、どのようなキャリアや環境によって培われたのだろうか。
“受け身”で成長した若手時代
新生銀行の前身は、旧・日本長期信用銀行。戦後の産業発展を金融面で支えた“長銀”である。中村氏が同行への就職を決めた最大の理由も、その公共性の高さにあった。