講演録① ~「Withコロナ時代」に求められる組織、人材の在り方を考える~ 異業種交流型 未来構想サロン レポート(前編) 菊池健司氏 箕浦龍一氏 水野雅弘氏
新型コロナウイルス感染症の拡大により、今まで当たり前だと考えられていた常識や価値観が大きく揺さぶられた。
これから企業が生き残っていくために解決すべき経営課題とは――このようなテーマで2020年10月から2021年1月まで4回にわたり「異業種交流型 未来構想サロン」が開催される。
今回は第1、第2会合の様子をお伝えする。
小誌連載でおなじみの菊池健司氏と、総務省で働き方改革、人材育成等を推進し、「機動力の高いナポレオン型管理職」と評される箕浦龍一氏が、今後のビジネスや人材について語り合った。
いつ“元通り”になるのか
菊池
コロナ禍の現状から元通りになるまでに、感染症の収束という側面だけで考えると2、3年ほどでは、と考えています。しかし、社会生活などは、完全に元通りには戻らないでしょう。
ちなみに、2008年のリーマンショックのとき、日本の上場企業が利益を取り戻すまでに何年かかったか、記憶されているでしょうか。リーマンショックのときは、2007年度を100としたときに、121%まで復活したのが2013年でした。「元通りになる」という意味は様々だと思いますが、このときは5、6年かかったと言えます。
コロナ禍によって企業の潜在課題が明らかに
菊池
将来の産業構造の変化について議論をするとき、コロナ以前は2050年という時期を設定することが多かったのですが、Afterコロナでは、2030年とすることが多くなっています。
箕浦
テクノロジーの進化のスピードがいま以上に速くなり、激変すると考えると、5年後さえも確たる予測がつかないのではないでしょうか。また、コロナ禍によって「変わらなければいけなかったもの」が「変わっていなかった」こともわかりました。つまり、いま顕在化している課題は、実は潜在的に存在していたものだったのです。
最近流行のDX(デジタルトランスフォーメーション)も、欧米諸国と比べて日本は20年遅れていると思います。平成の中盤くらいからすでに変化は始まっていたのに、特に大企業では昭和のマインドを引きずったままでした。足元の変化によって、今日のビジネスの形はまだまだ時代遅れであることにようやく気がついたのです。土台の立て直しが必要になっているというのが、日本がいま置かれている現状だと思います。
自社に起こり得る変化を予測してみる
菊池
日本のみならず世界中の技術データや特許データなどを収集しているアスタミューゼという会社が、「With /Afterコロナで起こり得る変化 」という未来予測マップを出しています(図1)。この手の自社オリジナルのマップをつくってみると面白いと思います。
箕浦
このマップにある個人、企業、社会のそれぞれのレベルの変化を、相互の関係性のなかで見つめ直すことこそが今日の大きなテーマでしょう。