第14回 会社は生き物 多様な人材が、仕事をつうじて 成長する場を目指す 吉村 恒氏 東京ガス 人事部長
暮らしを支えるインフラ事業として「安心・安全・信頼」を追求する東京ガス。
謙虚な姿勢のなかに、熱い使命感を宿す人事部長・吉村恒氏に、ラグビーで学んだチームワークや、これからの組織と多様性について話を聞いた。
チームワークの本質を学んだ日々
1987年12月6日、大雪の東京・国立競技場で行われた大学ラグビー、早稲田大学vs.明治大学の一戦は、ファンの間で今も「雪の早明戦」と語り継がれる伝説の名勝負となった。ノーサイドの瞬間、勝利に沸く早大フィフティーンの輪の中にいたのが現在、東京ガスで人事部長を務める吉村恒氏である。
驚いたことに、吉村氏は高校までラグビー部に所属したことがない。競技経験ゼロで、強豪校出身者が集う早大ラグビー部の門を叩いたという異色のラガーマンだ。
「もともと体育教師になりたくて、何かスポーツをやっておいたほうがいいだろうと、深く考えずに入部したんです。継続できたのは仲間や指導者に恵まれたから。早明戦も交代で入った程度ですし、活躍なんてしていませんよ」と笑う吉村氏。謙虚で、過去を誇るようなところは微塵もない。
ただし、ラグビーを語る言葉の端々には、競技から得たこと、学んだことへの感謝が滲む。それは、「One for All, All for One」の言葉に象徴される個と組織の関係、チームワークの重要性について、である。「あくまで私の解釈ですが……」と断ったうえで、吉村氏は切り出した。
「ラグビーと出会うまでは、チームプレーというとお互いに助けあうとか、仲間をカバーするといったようなことだと考えていたのですが、そうじゃない。チームのためにまず為すべきことは、各自が他人に頼らず、自分の責任を果たすことだと、ラグビーをつうじて学びました。たとえば、相手をタックルで止めなければならないとき、眼前に大きな選手が迫ってきたら、正直怖い。でも、自分が責任から逃げたら味方により負担がかかってしまいます。怖くても、痛くても、まず自分が体を当てて、その場の責任を果たすこと。そのうえで、仲間をサポートする。この順番が大切だと学びました。『どうせ吉村は逃げるんだろう……』と思われたら、大切なチームワークにひびが入ってしまいますし、そもそもメンバーに選ばれませんからね」
仕事もラグビーも一流を目指して
先述のとおり教職志望だったが、競技を続けたい思いや家族の勧めもあって、卒業後は東京ガスへ。同社ラグビー部でも選手として活躍し、現役引退後は部長や総務などマネジメントの立場でチームを支えた。