企業事例2 Z会 1年目から“教える”を意識させ“教える循環”をつくり出す
幼児から学生、社会人まで幅広い人々を対象に通信教育サービスを展開するZ会。教えることを事業の根幹とする同社では、“教えられる先輩”を目標に1年目から教育している。同社の教育手法から“、教える循環”のつくり方を学ぶ。
培われてきた“教える循環”を生む風土
新入社員もいつかは先輩になり、後輩を指導する立場になる。この当たり前の事実を前提に教育プログラムを組み立てている企業は、思いのほか少ない。そんな中で、“良き先輩”になるための指導を、入社1年目から徹底して行っているのがZ会だ。
同社では、いわゆるOJT担当者として「教育係」を任命している。任命される社員には特に年齢制限はなく、2年目であれ10年目であれ、選ばれる可能性がある。つい最近まで教わる側だった者が、翌年から新人教育の任に就くこともあるのだ。若手にとっては過度な負担や不安につながるのではないかと思われがちだが、総務部 人材開発課の山本立子氏は、彼・彼女らに抵抗感は全くないと語る。「皆、忙しい状況だと思いますが、後輩がいれば先輩が教育するのは、当社では当たり前のこととして受け入れられています。
教育係は、何十年もかけて根づいてきた制度です。当社の事業性格上、教育や指導に関心の高い人材が集まっている面もあると思いますが、いずれにしても、後輩ができたら教える立場に回るんだという意識は、長い歴史をかけて風土として定着しています」(山本氏、以下同)
教えることが当たり前という風土が培われてきたZ会。これを維持し、さらに磨きをかけるべく2010 年から「教え方」の習得を教育訓練制度の中に明確に組み込み、職場では上司が積極的にサポートすることで、「教えられたから、自分も教えるという、“教える循環”が生まれるよう意識している」という。
学び方の習得から始まる教育訓練体系
同社では、入社2年目社員を対象とした研修のカリキュラムとして「教え方」の講義が組み込まれている。人を指導する力や教育係としての経験は、同社が期待する人材を育成するために欠かせないものだからだ。
現在の教育訓練体系は、人事制度改革の際に結成されたプロジェクトで構築された。構築にあたっては、「Z会が期待する人材像」になるために「今後求められる能力」とは何かが議論され、身につけるべき能力として、
・広い視野
・コミュニケーション能力