巻頭インタビュー 私の人材教育論 世界への挑戦で試される会社と上司の度量
同社は、通貨処理機──金融機関の出納業務を効率化するシステムや、スーパーのレジの自動釣銭機等の国内トップメーカーだ。
日本一から世界一への飛躍をめざし、海外へ事業の拡大を進めている。
2018年には創業100周年を迎える同社の尾上広和社長に、事業戦略の実現に必要な人財と、その育成について聞いた。
通貨処理機で国内トップ
──2018年には100周年を迎えられるそうですが、これまでの歩みを教えてください。
尾上
当社はもともと電球製造装置の修理工場という下請け的な仕事をしていましたが、経営の安定のためには自社製品の開発が必要だと、修理業の傍ら、石油発動機や白墨(チョーク)製造機など、さまざまな自社製品を開発してきましたが、成功には至りませんでした。しかし、1950年に造幣局の依頼を受け、硬貨の計数機を開発したことをきっかけに、通貨処理機メーカーとして歩み始めました。以来、自動販売機や両替機などさまざまな国産第一号製品を開発して事業の幅を拡げ、現在では金融機関や流通業、交通機関、遊技場向け通貨処理機類の製造・販売事業で、高いシェアを確立しています。
──近年、キャッシュレス化やビジネスのグローバル化などが進んでいますが、こうした経営環境の変化についてはどう見ていますか。
尾上
短期的な経営環境については、よくなってきていると思います。アベノミクス効果で景気も上向いており、金融機関の設備投資も増加が見込まれます。
長期的に見ると、電子マネーの普及により硬貨の流通量が減っているという課題はありますが、紙幣の流通量はむしろ増加傾向にあります。これは日本に限った話ではなく、カード社会といわれる米国においても同様です。したがって、当社製品の市場が直ちになくなるわけではないと考えています。ただし、絶えず先を読むことは必要ですから、マーケティングを強化し、将来の市場の変化に備えています。
ちなみに電子マネーに関しては当社でも1986年から市場参入しており、プリペイドカードからICカードまで対応した製品をラインアップしています。
ビジネスのグローバル化に関しては、1964年に米国に製品を輸出したのを皮切りに、世界中に展開しています。また、1982年に米国に進出して以来、ヨーロッパやアジアなど、世界各地に現地法人を設立して、直販・直メンテナンスの体制を整備してきました。新興国の経済成長もあり、海外市場は今後もさらに需要が拡大すると見ており、積極的に経営資源を投入していく方針です。
世界のトップブランドに!
──そうした事業展開の指針となっているのが「長期ビジョン2018」でしょうか。
尾上
はい。当社は、これまでも3年ごとに中期経営計画を定めてきましたが、それだけですとなかなか、もっと大きな視点で“夢を描く”のは難しい。そこで創業100周年を迎えるのを機に、みんなで夢を描こうと、2012年に「長期ビジョン2018」を策定しました。
これは、次世代の経営を引き継ぐ部長層が中心となって策定したもので、「GLORYを世界のトップブランドに!」をグループビジョンとして、2018年度に連結売上高2600 億円、連結営業利益率12%をめざすことを謳っています。
──事業展開の具体的な内容は、どんなものですか。
尾上
1つは、国内市場の深耕です。通貨処理の分野では一通り機械化を達成している金融機関の市場でも、現金処理以外の分野では、まだお客さまが満足していない部分も少なくありません。そうしたニーズを先取りして製品を開発し提供することで、既存市場で新しい需要の掘り起こしを狙います。
もう1つは、海外市場の開拓です。当社は2012年に、イギリスの通貨処理機の製造・販売会社であるタラリス社を買収しました。世界中の金融機関向けの通貨処理機を扱い、世界規模で販売・保守のネットワークを持つ同社を子会社化することにより、一気にビジネスの裾野が広がりました。海外での事業拡大を急ピッチで進めていきます。