第13回 チャンス思考の合言葉「それはちょうどいい!」 人事が自ら楽しむことで人の意識に火をつける 渡辺剛史氏 都築電気 総務人事統括部 人材開発部 部長
システム構築やICT導入等のソリューション提供を行う都築電気。
人材開発部の部長である渡辺剛史氏の人事としてのキャリアは、モノづくり現場から抜擢された10年前にさかのぼる。
多くの挑戦を前向きに楽しむ渡辺氏に、仕事への思いや使命を聞いた。
変化もリスクも「それはちょうどいい!」
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本企業の新入社員研修を直撃した。都築電気も例外ではなく、主管する人材開発部では急遽オンラインでの実施に切り換えたが、部長の渡辺剛史氏は、その判断を決して「急場しのぎの苦肉の対応」などと後ろ向きにはとらえていない。最初こそ環境の急変に戸惑ったものの、むしろ「それはちょうどいい!」とポジティブに考えたという。何が、ちょうどよかったのか――。
都築電気の新人研修は9月末まで、実に半年間も続く。一般的なそれよりはるかに長丁場で、密度の濃い研修スタイルは、渡辺氏が中途入社する前から同社に定着していた。
社会人としての、また都築電気の社員としての心構えやICT の基礎知識を学ぶだけでなく、研修の後半では職種別に分かれ、営業は営業、技術系は技術系に最低限必要な専門知識とスキルの習得を目指す。ある程度自分で動けるところまで成長を促したうえで、10月1日から晴れて現場へ本配属となるわけだ。
そこまで手厚い研修内容だけに、オンラインで代替できるのか不安はあったが、「実際にやってみたら、思っていたよりずっとうまくいったんです。開始して3日目ぐらいで、手応えを感じました」と、渡辺氏は胸を張る。
「新人たちはちゃんとついてくるし、討論やグループワークも問題ない。新しい技術への適応能力がすごいんです。オンライン会議のツールも、彼ら自身でいろいろな機能を活用して使いこなしていきました。そこで、私は確信しました。新人研修でここまでできるのなら、従来は集合するのが当たり前だった他の社内研修もオンラインでできるなと。よりによってコロナは新人研修と被りましたが、当社にはそれがちょうどよかった。やればできると実感できたおかげで、今年予定していた研修すべてをオンライン化するという業務改革の意思決定ができたのですから」
渡辺氏は、どんな状況に陥っても闇雲にリスクやピンチととらえず、「それはちょうどいい!」とあえて口に出し、思い、考えるようにしている。そうすることによって物事のプラス面に思考が向かい、可能性やチャンスが見えてくるからだ。
そうしたポジティブな「チャンス思考」が、自分の軸として固まっていったのは30歳代。前職のコクヨ時代だという。それは、モノづくりから人づくりへ、自らのキャリアが大きく転換した時期でもある。